Foufou

ブラッド・レッド・スカイのFoufouのレビュー・感想・評価

ブラッド・レッド・スカイ(2021年製作の映画)
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タイトルが、もうね。
でも、飛行機映画だし、ドイツ映画だし。やたらカメラワークが煩かったりたり、音が五月蠅かったりする映画は遠慮願いたいと思って見始めた者には、冒頭から好ましい展開です。

しかし私にとって好ましかったのは前半までですね。でもここは評価の分かれるところでしょうから、詳細は控えましょう。これはね、もう一つの展開があり得た脚本なんですよね。そして、そのもう一つのほうを、私は見たかった。病身の母親が、無敵になるという展開ね。

ハリウッドの形式に途中から則って、映画は大衆路線に舵を切るわけです。そうすると、どうしてもクリシェが目につく。これを瑕疵と見るか、お約束として鷹揚に構えるか。今の私の心の持ちようでは、クリシェの連続がどうにも……。

これはこの映画のことではありませんけどね、たとえばビーチで寛いでいたら突然タンカーが座礁するなんて事態が主人公たちの目の前で発生したとする。そのときの人物のリアクションなんてなんでもよさそうなものですけど、突き詰めればそうバリエーションもないはずなんですよね。それを安直に過ごしている脚本かどうかは、映画を百本も見ていれば気がつくと思うんです。つまり、おのずとその映画の脚本がよく練られているかどうかも、ある程度客観的にわかるはずなんです。

よし、ここでエゴイストを登場させて事態を面倒な方へ展開してやろうとかね、まぁ、それも観客を飽きさせない工夫としてやるんでしょうけど、こういう演出では、かえって観客をしらけさせるんじゃないかとか、そういう細心さを持っているかどうかが、今度は監督の価値を決定すると思うんですね。ひいては、映画の価値を、端的には、面白いか面白くないかを決定する。

この手の映画の可能性が広がる予感のした映画だっただけに、中盤がなんとも惜しいのでした。
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