ジジイ

人生は、時々晴れのジジイのレビュー・感想・評価

人生は、時々晴れ(2002年製作の映画)
4.2
2002年マイクリー作品。何年かぶりの鑑賞。サウスロンドンの団地に暮らす一家四人の物語。父はタクシードライバー、母はスーパーのパート、姉は老人ホームの清掃員、弟は無職。小柄で痩せている母以外の三人は、みな大柄で肥満体型である。これが恐ろしく本物の家族に見える。もちろん体型を寄せていることも一つの理由ではあるが、とにかく会話がリアルすぎるくらいリアルで、もう家族そのものなのである。しかもその台詞は用意された脚本ではなく、即興だというから驚く。カンヌを獲った「秘密と嘘」も好きだが、この作品も本当に素晴らしい。








以下ネタバレです。








父親役のティモシースポールのおどおどした表情がアップになる度に、ゲラゲラ笑いながら観ていたが、病床の弟ジェームスコーデン(当時めちゃくちゃ太ってる)が頼りにならない父を責める母をたしなめるシーンで不意に泣かされた。撮影に入る前から入念に家族関係を築いていなければ、決して表現することが不可能なレベルの空気感に本当に驚かされる。隣人たちの役者もみな素晴らしく、当時まだ20代のサリーホーキンスも眩しいくらいに初々しい。序盤から劇伴だけがやや過剰で気になったが、事件が起こってからはあまり気にならなくなった。家族だから言えることと、家族だから言えないこと。近すぎるが故に抱えきれないほどの孤独を感じることもある。「人生とは孤独感と、一人ではないという感覚が複雑に絡み合ったもの」という監督の言葉が見事に表現された作品である。
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