井中カエルand物語るカメ

劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編] 僕は君を愛してるの井中カエルand物語るカメのレビュー・感想・評価

3.5
#劇場版ピンドラ
やはり難しい…ボクにとってピンドラは娯楽作ではなく2010年前後の社会の空気感を切り取った社会派作品だとさらに実感しました。面白いとか、エンタメとかそういう次元にない作品
一方で現代社会(2022年)にこの作品が描いた精神性が当時より強いかと言われると…正直否、ですかね

例えばボクにとっては今作で登場する『子どもブロイラー』などは秋葉原事件の加藤智大だと感じています。作中ではすり潰して透明になるけれど現実はそれでも存在する。そして冠葉、晶馬などのように繋がりを獲得”できなかった”人の末路が加藤智大につながる、少なくともそう解釈します

本作は宮沢賢治や村上春樹、オウム真理教などの様々な要素を取り入れながらも2010年代前後の空気感や問題感覚を描くことに成功しているようにも感じました
ではそれを2022年の今観る価値があったのか? 更新されていたのか? と問われると、残念ながら否になってしまうという見方です

ボクは平成から令和になって、今の時代は『僕は君に出会えなかったし、愛せなかった』時代だと感じるんですよね
その意味ではこのテーマや描き方の時代は過ぎ去ってしまっているのではないか…という思いもあります

…やっぱり今作はアニメ表現や音楽云々以外の社会論を語りたくなりますね

あとは、気になったのはラストで『あ、幾原監督は庵野さんのシンエヴァと同じところに辿り着いたんだな』と感じたところでしょうか