だいち

流浪の月のだいちのネタバレレビュー・内容・結末

流浪の月(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

まず。李相日監督、すごいです。
怒りは強烈で鮮烈な印象を残し、今でも心にしっかり刻まれています。

ノートにびっしり感想は書き殴りましたが、とても書ききらないので…

全員、MVPです。
すずちゃん。あなたはもはやこの監督のためにいるような俳優ではないでしょうか。この先、どんな役をやったとしてもこの監督との作品が代表になるような。清純女優を投げ捨てて、身体を張った演技。圧巻でした。怒りの時は、初めてその演技の幅を見て驚ました。今回はその記憶を持って臨みましたが、それでも尚、圧巻でした。

なんなら、怒りで報われなかったすずちゃんの役を昇華させたような、そんな印象まで受けました。怒りの少女から1人の大人へ。すごかったです。

そして松坂桃李くん。
体は動いてないのに、表情1つで感情を伝えてくれるその表現力、そして佇まい。
とても真面目で、まっすぐな俳優さんだと、思わざるを得ません。

感情表情についてはすずちゃんも、すごかった。いや、後述の流星くんやお母さん役も。みなさんの感情が表情一つで伝わるのは、すごすぎます。

横浜流星くん。
「イケメンキャラで見られることに違和感を感じる」と何かで言っていた気がしますが(うろ覚えです)、まさに、体当たりな人でした。流星くんの場面では動きや音が激しくなるのは、この映画でとても伝わってきました。
一見エリートだけど、それは何かの裏返しなのかも…
本当に、スーツ姿や肉体、すべてにおいてこの主演陣にまったく引けを取らない、そんな役でした。

多部未華子さん。
恐らく初めてのこういった女性なのではないだろうか。(アイネクライネ見てないが)ただ、儚くて真面目で。素敵でした。
(ただ、すみません。2度目の週刊誌の時の犯人はあなただと思ってしまいました。気持ち悪く思った腹いせ的な。)

趣里さん。
「生きているだけで、愛」にて、繊細で激しい印象を受けました。そのように踊っていました。
今回も、その激しい立ち位置が、主人公との対比になっており、とても印象に残る人でした。

子役の方。
あの、すずちゃんにそっくりすぎません?
あと、趣里さんの子役の子も。整いすぎじゃないですか。

あとお母さん役の方。
なぜそこに一つだけ木を植えていたのですか。

現代の、事件の犯人を袋叩きにするような兆候、そしてネットでの撮影、拡散。
それに対する店の店長の「そういうことじゃないんだよ。そう思わない人の言葉を聞いてほしい。本当に心配してる人の言葉を。」という言葉。そうですよね。理不尽はある。だけどきっと、あなたを本当に心配してくれる人はいる。

今回の作品でも、みんなどこかに傷を負った人。それは身体的にも内面的にも。でもだからこそ、傷を負ってるからこそ、他の傷を負ってる人に寄り添える。その繋がりがたくさん見える。

怒りの時もそうだが、今回ももしかしたら実際の「幼女誘拐事件」的なことをモチーフにしているのかもしれない。と思った。

だとしても、「本当に報道されていることだけなのか?」「犯人は本当に犯人だったのか?」ということがどちらの作品からも感じる。

李相日監督は、そういったリアリティあることの中に、血や涙、そしてセクシャリティがある。特にどちらの作品でも「女性に対する男性の暴力」が「理不尽なことの一つ」として取り上げられていると思う。他にも「親」もその一つか。

アンティークの主人が言っていた。
「人も物もおんなじ。出会って、離れて、また出会って。」

すずちゃんは、2度、救われる。その際には生き生きと、そして「生き返った気分」と口にする。本当にそうであるかのように。
すずちゃんも、1度目は幼く弱かった自分を守ってもらった。そして2度目は自分も守る側になった。感動した。

守ってくれた人は、その人がどんな人であれ。たとえその人が。

3度目は、自分が守る。

「あなたはあなたのためにある。」
「住みたいところに住めばいいよ。」

あなたは、自由なんだ。
あなたのために生きていいんだ。


最後に。別の女優になるが
山田杏奈がインタビューで「俳優は汚いところを見せる仕事だから。と言われたことを覚えています。」と言っていました。(ちょっとうろ覚えです。)

この作品、いやこの監督は
だとするならば

素晴らしい映画監督の
1人ではないでしょうか。
だいち

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