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流浪の月のse16のレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
3.9
 原作読了後に映画を鑑賞したのだが、映画は原作よりも時系列の入れ替わりが多いため、理解の助けになった。そして映画には好きなポイントが沢山あった。
 まず役者が素晴らしい。主役3人の演技は終始陰鬱な世界観を作り出していた。キャストを見た時は文と亮の配役が逆だと思っていたので驚いたが、見終わった今は適役だったように思う。
 次に音。会話シーンの環境音がキャラクターの心情と重なる部分があったように感じられた。更紗と亮がカフェで会話する最中に豆を引く音、文と更紗が部屋で会話する際の虫の声、更紗と亮がアパートの玄関で口論する際に聞こえる車のクラクションは印象的。本作は音楽の流れるシーンが多いのだが、環境音も音楽に埋もれることなく聴こえるようになっていた。
 最後は画。光の陰影が作品の重厚感を引き立たせている。役者の顔が見えづらいほど影がかかるのだが、キャラクターの心情に合わせて顔が見えるように光の当たり方が計算されているように感じる。カメラアングルも魅力的で更紗がベンチで空を見上げながらハンバーガーを食べるシーンが好きすぎた。
 編集のセンスも素晴らしいと思う。李想日監督は初めて知ったのだが、他作品も是非観たいと思う。
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