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ミラベルと魔法だらけの家のsyuheiのレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
3.5
2021年のバイロン・ハワード&ジャリッド・ブッシュ監督作品。原題は"Encanto"。

コロンビアの小さな村、誰からも頼られるマドリガル家。なぜなら一家は全員が超人的な力(ギフト)を持っているから。ひとりミラベルを除いて。自分にだけ特別な力が備わっていないことに思い悩むミラベルは、ある日マドリガル家にふりかかる不吉な厄災のビジョンを見る。一家の運命やいかに?

ディズニー60本目の長編アニメ映画。近年いろいろな作品が持つ者vs.持たざる者という対立軸を扱っており、本作はディズニー流の解釈と言える。またぞろメタヒーローものだったら嫌だなぁと思ってたが、特殊な才能を受け継ぐ家族の責任と重圧という、小さくも上品な物語に仕上げている。うまい語り口。

とても印象的な劇中歌を手掛けるのは『ハミルトン』のリン=マニュエル・ミランダ。特に力持ちの長女ルイーザが誰にも打ち明けられない内面の苦悩を歌うヒップホップテイストあふれるこの歌は素晴らしい。>Jessica Darrow - Surface Pressure (From "Encanto") - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=tQwVKr8rCYw

本作が問いかけるのは、特殊な才能の有無だけが人間の価値を決めるのか、ということ。本当の悲劇とは、才能の有無ではない。自分が誰からも必要とされないことだ。その悲しみが人々のあいだに深く暗い断絶を生む。コロナ禍で活躍の場が奪われた多くの人々がミラベルに自らを重ね、共感するのでは。

歌もメッセージも上質なれど、劇映画としてはもう一工夫ほしかった。ミラベルの活躍が明らかに物足りない。マドリガル家に降りかかる厄災とその超克が、ラスト、あのようなかたちで成される以上、ミラベルは活躍のしようがない。ラストが読めた中盤でどうするんだろうと思ったら結局そのまま終わった。

本作に限らずだけど邦題のパターン化が気になる。「AとB(とC)」「AとBのC」みたいな単調なタイトルづけ、いい加減に飽きてきた。もうちょっと工夫してほしい。あと、本作を通して観れば一家の特殊能力を「魔法」って言うたらあかんやろ。真面目にタイトル考えてほしいなぁ。

https://twitter.com/syuhei/status/1474944504491032577
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