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私ときどきレッサーパンダのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

一番目先の主人公と母だけの物語じゃなくて、母もまたその母に厳しく育てられていてそのマインドを受け継いでるのだ、という話になっているのが良かった。母が幼少期に受けた指導をその子供にもしていて、母自身も悩み苦労したし心配ゆえに取締りが厳しくなっていて。
今作を見ると親をはじめ人に対して優しくなれるし、自分に槍を投げ紐で縛ってくる奴らにこそまず呪いがかかってるんだと思える。ティーンエイジャーのときは知性も余裕も無く、自分以外に気を配れなかったけど、親も1人の人間であることと、親だけど未熟な面もある1人の人間だということに今なら気付ける。あと今作のようなピクサーアニメとか、数年前までのアニメってメイ母のようなキャラの親が割と典型的だった気がする。子供を厳しく監視して、恋愛とか結婚とかに関して自分の方針や不安をズカズカ押し付けるような。
だからと言って今作は親という生き物が悪であり呪いということを伝えてるわけじゃなくて、感じるべきなのは、これまでの社会全体のムードが違ったからもう変えていきましょうという考え方な気がする。伝統も良いところは愛するし、自分のチョイスも愛するということ。親に本当の自分隠すのって一番厄介で辛いなとヒシヒシと感じて胸が痛くなった。

あと日中韓のカルチャーがミックスされてるのが面白かった。たまごっちだったり、レッサーパンダに変身するシーンで漫画のコマみたいなデザインが一瞬使われてたり、4タウンがライブしてた「スカイドーム」は「コチョクスカイドーム」を思い出したし、4タウンにテヨンというメンバーがいたり、親戚の叔母さん一同のディテールも細かくて、「サニー」とかの迫力を思い出すような、こういう韓国・中国の爆買い叔母さん見覚えあるなという感じの再現度で面白かった。

なんと言っても特にOSTが良い曲揃い。ビリーアイリッシュ&フィネアスが作曲した曲が特に、「90年代のボーイズバンドを確立したスウェーデンのスタジオからインスピレーションを受け、同じようなサウンドとシンセを使用しました」と本人らが語っているように、backstreet boys感をビシビシに感じる音作りで、それにヒップホップがミックスされて古き良きKPOPのSMとかH.O.Tっぽさも図らずも感じる。コンサートシーンとか、オタクが会場で感じてきた興奮のそれが詰まってて、簡単に現場に行けない今見るとポロポロ泣けた。

その90sの音をベースに今のムードがミックスされて劇中曲になってる感じとか、ストーリーが主人公とその親だけの話ではなく、これまでの社会全体のムードを感じる展開がされてるところとか、とにかく「今」を感じる作品だし、今見るべき映画だったなと思った。

巨大化したメイ母パンダがライブ会場に乱入してくるくだりとかトンデモ展開もありつつそれも楽しめた。

メイの父が言った、「人にはいろんな側面があって、とても複雑な面も抱えている。大事なのは悪い面も追い払わず、受け入れて共に生きること」という言葉が、今から生きていく上で、大人になる上で大切な優しい言葉で泣けた。荒療治で自分の短所を押さえつけ品行方正になりなさいというムードの方が強かったし今もそれなりに強いけれど、そうじゃなくて、短所も受け入れて共に生きていくことで自分全体をちゃんと愛すことができるっていう。まるっと自分を抱きしめてもらえるような言葉だった。

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製作ドキュメンタリー
「レッサーパンダを抱きしめて」
を見て、製作人のほとんどが女性で、彼女たちも悩み激情し色んな混沌の中で大人の女性になったこと、大人になっても日々悩みながら子育てをしている親であることが、主人公のメイやメイ母をはじめストーリーに思いとして詰まっているなとヒシヒシと感じた。

本編を見てる時も節々で感じていたけど、監督がアニヲタで日本のアニメーションを意識してキャラクターの表情だったり画面デザインをしてるらしく、確かに若干の駿感がある。おそらくKPOPとかも好きなんだろうな。だからこそのカルチャーのミックス感を端々で感じる。これまでのピクサーの枠を超える作品作りを心がけて作ったそうで、手書きも多く質感にも拘ってるのがよくわかった。製作陣もピクサーの名手がかなり関わってるんだな。

あとただただピクサーで働きてえ〜〜となるドキュメンタリーであった。
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