Masato

私ときどきレッサーパンダのMasatoのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
4.6

アジア文化と女性としての変化

ピクサー最新作は短編baoでスクリーンデビューした新人監督ドミーシーがアジア系の女子中学生を主人公に描いたアニメーション!さすがピクサー。最高のストーリー!大傑作!

前からそうなのかもしれないけど、最近のディズニーって主人公を物凄く陥れるような気がする。見ていて耐えられないくらいに序盤の主人公の報われなさっぷりが目立つ。母親から言われ、学校ではイジメられ、家族からは厄介者にされ、自分の体は制御できなくなる。見てて死にたくなる。ミラベルも家族から信じられないくらいに言われまくって最初は辛かった。

やはり監督がアジア系ともあって物凄く日本人の価値観にも近しいキャラクターが多かった。母親が強くて父親が寡黙で優しい感じとか、完璧を求められるし、求めてしまう。結果的に両親に完璧な子でありたいと気を遣いまくる感じとか。これぞアジア人ってな家族だった。コミュニティを重視するが故に個人がない。

そんななかで完璧であるべき自分と本来のハッチャけたい自分で葛藤するメイリン。完璧じゃなくて良いと思うのは簡単だけれども、実際にそう確信するのも、そう言えるのも難しい。他者や世間があるかぎり、その葛藤はどの年齢になっても消えずに続くと思う。それは劇中でも何度も描かれていた。だからこそ、メイリンの導き出した答えは勇気があるものだった。苦しみは消えない。だから、共に生きていく。

レッサーパンダはそうした葛藤や苦しみのメタファーであると同時に、女性の思春期に起きる身体的変化のメタファーにもなっていて、この時期に起きることをどのようにアニメーションとして表現し、物語にするか。という発想力と想像力が流石超一流のピクサーだと思わせる。包み隠さず、ありのままに性も葛藤も描く。本当に奥深くて普遍的なテーマで子も親もみんなを泣かせる。ピクサーのことだから、監督自身の実体験だろうし、何もかもが出来すぎてる。

舞台が2002年で30代にはドハマリするであろう小ネタがビッシリ。たまごっちにバックストリートボーイズ、ディスティニーチャイルド。もうこれは最高。

日本のリスペストもかなりあって、例のシーンではまさかのKAIJU、ゴジラのオマージュ。伊福部節が聴けてしまう。そして、日本の少女漫画みたいなキラキラな目の表現とか、どことなく香るジブリの雰囲気とか。

オリジナルソングはビリー・アイリッシュとフィニアス兄貴のコンビが作っている。007に続いて、作品にリスペストを込めたすばらしい00sライクな曲を作り上げる天才っぷりが凄まじい。本当になんでもこなしちゃうんだな。稀代の天才だわ。大好き。

作曲のルドヴィクゴランソンはいつものトラップビートを使った独特な劇伴で面白い。それに今回はアジア的な音楽がかけ合わさってなんとも異質な劇伴だった。

100分にこれだけ小ネタもオマージュもストーリーもテーマも詰め込みまくって完成度が高いのがもう流石。来年はコレとスパイダーバースでアカデミー賞一騎打ちかもな。
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