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私ときどきレッサーパンダのambiorixのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
3.5
事前に「すごい毒親が出てくるぞ」とは聞いてたんだけど、想像以上だった。っていうかこれ、うちのオカンやんけ!過干渉ママというか抑圧ママというか、当人は本気で子供のためを思ってやってるつもりなのかもしれないけど、やられた子供がどう思うのか、どう感じるのか、という想像力が致命的に欠けているところがすごくリアルで、他人事に見えなかった。そういう毒親とほぼ絶縁状態の身としては、あのママをメコメコにぶちのめして終わってもらいたかったんだけど、さすがにディズニーのアニメでそれは無理だよね。ただ、怪獣映画や進撃の巨人(レッサーパンダの立体機動みたいな動きには笑った)を思わせるラストバトル兼親子喧嘩でもってスタジアムを壊すわアイドルのライブをめちゃくちゃにするわたくさんの人間を殺しかけるわで、わりと取り返しのつかないことをしてしまっただけに、せめてそれ相応の責任は負うべきだったんじゃないのと思う。周りのみんなは許しても司法が許しちゃいかんでしょ。まあそもそも人間がレッサーパンダに変身することに関してあんまりツッコミが入らない世界のお話なのでこのツッコミも野暮てえやつかもしれないが…。
で、結局レッサーパンダってなんだったんだろう?自分の内面にある影の部分、無意識下に抑圧してきた自分のもっとも嫌いな部分のメタファーみたいな感じなんだろうか。感情を制御できなくなるたびにそれが表面を突き破って出てきちゃう。ラストのスピリチュアル世界で「レッサーパンダの部分も含めた自分を肯定する」という答えにたどり着いた主人公のメイは、儀式というかたちでおのれのレッサーパンダと向き合うことから頑なに目を背けてきた一族の負の連鎖を断ち切ったともいえるわけで、そういう意味ではムカつく親にひと泡吹かせた、ってことになるのかね。その証拠にラストシーンはとてもじゃないけど和解した母と娘の関係性には見えず、むしろ娘にマウントを取られたことによる敗北感や過ちからくる負い目のせいで強く出ることができなくなり、精神的に去勢されてしまった母親の絵にしか見えない…というのはげすの勘ぐりか。
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