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ブルー・バイユーのogのネタバレレビュー・内容・結末

ブルー・バイユー(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ずっと気になっていてアマプラで配信が終わってしまうので何となく見てみたら、ものすごく号泣してしまった。
ラストシーンの後、実際に国外追放されたり、国外追放予定となった人の幼い頃の写真と今の写真が並ぶ。事実を基にした話だとわかりながらも、実際に苦境に立たされた人々の笑顔が胸に刺さる。

冒頭の、生まれてくる子の性別を聞いた瞬間のアントニオの表情からすぐに引き込まれて、ラストシーンまでずっと心臓を掴まれたまま見続けていた。
ベトナム難民家族の家で、なぜ別れて船に乗ったのかと聞かれたらパーカーが「全滅しないため」と答えた瞬間から涙が止まらなかった。子供の頃に船に乗ったはずのパーカーが、そのときすでに明確に、この船は沈むかもしれないと知っていた事実が辛すぎる。
ほぼ同時に発生したにも関わらず前者が大きな関心を集めていたタイタニック号見学ツアーの潜水艦事故とギリシャ沖の移民船転覆事故のことを思い出した。

いつもどこか寂しげで所在なさげなアントニオの表情は、アメリカで30年以上暮らしていて自分はアメリカ人だと自覚を持ちながらも、どこへ行っても帰属できず、認められず、はみ出しものとして成長してきたからだろう。そんな彼がはじめて家族になれたのがキャシーとジェシーだったのだと思うと、自ら彼女たちを守るために離れる決断をした強さを讃えたくなる。いや違うな、そんなひでえことあるかよと怒らなきゃいけないよな。
「家もないんだぞ」という一言にハッとする。知る者もなくおそらく言葉もほとんどわからず、どうやって生きていこうと言うのだろう。「全滅しないため」という言葉はこのラストシーンにも繋がっているのかもしれない。

養母が聴聞会に来てくれたことを、彼は知っているのだろうか。
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