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沈黙のパレードのmatchypotterのレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
3.9
最近、新宿バルト9率が高め。
ここ、何かゴミゴミしてなくて嫌いじゃない。

今、『ガリレオ』のTVシリーズを観なおしてるが、観終わることができず、とはいえ我慢して待つこともできず、途中で意を決す。

ここ最近の観直し活動が『真夏の方程式』→『沈黙のパレード』→TVシーズン1→TVシーズン2となりそうで、もはや順番メチャクチャだけど、SPドラマ以外はすでに1回は通ってるので良しとする。

『真夏〜』のレビューでも書いたが、ガリレオの劇場版はTVシリーズのコミカルさはあまり出てこない。

なぜなら、“変人ガリレオ”が“警察からの捜査依頼”で、一見して警察では立証不可能なトリックや殺害方法を科学的な仮説と実験で証明していく痛快推理モノのTVシリーズと違い、劇場版は“湯川本人に関する人や現場で事件が起きる”から。

この違いは、湯川の客観的で論理的で他人行儀で受動的に関与する前者と、湯川が主観的で感情的で自主的に関与する後者、と湯川の立場が明らかに違う。

今回の劇場版も後者だが、これまでの後者とも少し違う。
“湯川の大学時代の親友”に関することでも、“湯川が参加した別プロジェクトの現場”でもない。

今回は“湯川の現在の盟友草薙の過去から生まれた副産物としての殺人事件”。
そういう意味では、前者と後者の間のような、また新たな湯川の立ち位置やアプローチが観れる作風。

冒頭のシーン。いきなりどこかの広々とした公園で行われる催事の“のど自慢大会”から始まる。いきなり何か見落としたのか、と思うほど唐突。

しかし、この冒頭シーンの威力がそこから続く物語の全てを物語ることに。何やら楽しげな始まりで、とある女学生が突然スターダムに駆け上がるかのような駆け出しから、いきなり瞬時に奈落の底に突き落とされる絶望感へ、、、。

この出来事が何なのか、となると、そのままの勢いで“草薙の過去”と繋げにくる。
ここまでの流れ、恐るべきプロローグ感。
この短時間で、目の前の事件と“草薙の過去”、そして、草薙の悔恨をすべて曝け出させる描き方が凄まじい。

そこから湯川の登場。
そういうわけで、今回は草薙と内海と警察側が“元祖”の顔ぶれ。

イチモツ抱えて、客観的にいつもの捜査すらままならない精神状況の草薙。
顔ぶれは“元祖”でも、TVシリーズのような痛快さはそこにはない。

ただ、ここまでの歴史、出会いからの積み重ねがあり、湯川も少しは人間味も出てきているし、内海との掛け合いもツーカー、噛み合わないこと前提の噛み合わなさをやり切りながら、それでわかり合う2人。

これが安心感を生みながら、草薙に対して“部下であり警察の内海”と“親友であり科学者の湯川”が2人して複雑な感情を共有し合い、草薙や事件と向き合う姿がとても印象的。

故に今回は、痛快さは少なく、湯川個人の内面的な部分も少ない。湯川のダイナミックで色々世間一般的な常識度外視の派手な実験もない。

その分、草薙の真理や、警察の存在価値、そして、そこから生まれてしまった悲しい副産物やそれに何かを思って生きている一般の関係者の様が色濃く描かれている。

ずん飯尾の演技が神がかってる。他の豪華キャストの雰囲気にも感化されてるのだと思うが、彼がゾーンに入って、他も刺激されてゾーンに入ってるかのような。彼の表情から伝わる重みがスゴい。
檀れい、ホントかわいいな。気品があって笑顔が可愛くて凜としつつ天真爛漫さも兼ね揃える女性、素敵すぎる。

“沈黙”=“黙秘”。
起きた出来事の真実が語られないこと、それを突き止められないこと。
それでも事実として誰かが誰かに何かをされている。

犯人の特定、殺害方法の究明、真実とは必ずしも友にとって喜ばしいこととも限らない。
しかし、その友は警察であり、事件の真相を解明し、詳らかにすることを職責とする。

草薙の過去によって、また新たな悲しい出来事が起きて、例えそれがそうであって欲しくなかったとしても、、、。

湯川も自分自身が『容疑者Xの献身』で味わった“暴きたくない真相を暴くこと”の苦味を噛み締めながら、それを繰り返したくないと切に願う複雑な心境で内海と共に草薙にそっと寄り添いながら、重たい過去を乗り越え、一緒に前に進み、真実へ辿り着く、、、そんな作品。

時を経ても内海、柴咲コウ、素敵。
北村一輝の後半にかけてやつれた憔悴っぷりも印象的。

実際の殺害トリックや、湯川のキャラクターよりも、この湯川が関わる関係者の思いやドラマ性がより色濃く感じる作品。

相変わらずいつの間にか渦中の店の行きつけになって常連として和気あいあいしてるとかは“変人ガリレオ”冥利に尽きるけど。

観直し活動、今回はやや後手後手になったが、しばらくすると『Dr.コトー』がやってくる。これはちゃんと観直して臨めますように。

Wカップのサッカー選手の言い方を借りるとすると「良い準備をしたい」。


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M:11982
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