ROY

グレタ ひとりぼっちの挑戦のROYのレビュー・感想・評価

3.8
CINRAオンライン試写会にて

市民グレタ、環境活動家グレタ

環境活動家・清水イアンさんを交えたオンライン座談会には未参加

■NOTES
2018年夏に15歳で、気候変動への取り組みを求め、スウェーデン国会の前で座り込み抗議を始めたグレタ・トゥーンベリさんは、その活動で世界的に注目されるようになった。

俳優・作家の父親、スヴァンテ・トゥーンベリさんはBBCに対して、娘が活動家になることには当初反対だったと話した。その上で、2012年にアスペルガー症候群と診断されたグレタさんが座り込みを始めるまで、長く鬱(うつ)状態で他人と話さず、食事もとれない状態だったと語り、その彼女が活動を始めて以来、驚くほど変わったと述べた。

スヴァンテさんは、今もグレタさんに浴びせられる「憎悪」が気がかりだが、グレタさんが活動を始める前よりずっと幸せそうなのは安心するという。

↑「話さず食べられなかった娘、今は幸せ グレタ・トゥーンベリさんの父」『BBC News』2019-12-31、https://www.bbc.com/japanese/video-50953880

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グレタさんは、アスペルガー症候群と強迫性障害、場面緘黙であることを公表してる。アスペルガー症候群とは、知的障害を伴わない自閉症のこと。東京都自閉症協会によると、対人コミュニケーションが苦手、興味の対象が限定的、などが主な症状だという。

しかし、グレタさんは言う。「アスペルガーは病気ではなく、1つの才能。アスペルガーでなかったら、こうして立ち上がることはなかったでしょう」と。(本人によるFacebook 2019-02-02の投稿〈https://www.facebook.com/gretathunbergsweden/photos/a.733630957004727/767646850269804/?type=3&theater〉より)

↑Haruka Yoshida「発達障害と生きる“アスペルガーは私の誇り”-グレタ・トゥーンベリさんが投げかける“障がい”の意味-」『ハフポスト』2019-09-25、https://www.huffingtonpost.jp/entry/greta-thunberg_jp_5d8acbfde4b08f48f4ac7565

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同じく自閉症の16歳のシエナ・カステロンは、いじめ反対の活動家で、自閉症や学習障害をもつ子どもたちからの相談を受け付けるウェブサイト〈Quantum Leap Mentoring[https://www.qlmentoring.com/]〉を立ち上げた。シエナも、グレタから刺激をもらったという。

「自閉症を抱える10代の女の子として、姉妹のように感じてる。同じような体験もしてるし。グレタのお母さんが言うには、グレタはいじめられていて友だちがいなかったそうだけど、多くの自閉症の女の子は10代のときに同じような経験をする」

↑Jack Howes、Nozomi Otaki訳「“自閉症は誇り”活動家グレタ・トゥーンベリがもたらした前向きな変化」『i-D』2019-06-05、https://i-d.vice.com/jp/article/neaenw/the-positive-impact-of-having-someone-proudly-autistic-in-the-spotlight

■THOUGHTS
グレタが行動を起こしたことによってこんな大きなムーブメントになっているとは知らなかった。

本作は、気候変動がメイントピックという感じではなく、あくまで「グレタ・トゥーンベリ」という15、6歳の少女に焦点を合わしている。障がいを持ちながらもそれを活かし、懸命に活動を展開していき、やがて運動は世界に広がっていく。彼女の勇気ある行動には感銘を受けた。まずは「知ること」が重要だと改めて気付かされた。私も少しずつ知見を広げてアクションを起こせるよう努めていく。

グレタの爆笑、グレタの舞い

お父さんからの視点も描かれている。笑うようになった娘を見て嬉しいだろうが、やはり自分の子が世界に知られるようになって、悪口を言われるのは辛いに違いない。

何ヶ月か前にグレタが『ミッドサマー』のダンスを踊っている動画が回ってきた。〈https://twitter.com/reedcurtis/status/1408410756924706817?s=21〉

リッキー・ジャーヴェイスが去年のゴールデン・グローブ賞のスピーチでジョークを言っていた。〈https://youtu.be/byI1YkWwAbs〉

Billie Eilish「The End of the World」

日本ではゆたぼんが話題にあがる

持続可能性や、それを英語にしてサステイナビリティなどと広告に付けているのをよく見る。

大人は儀式のように集うべくして集う。若者は抗議すべく集う。この作品を通じて、プラカードに書かれた「REBEL」という文字の裏に、何百万人という人の顔が浮かぶようになった。

■グレタ・トゥーンベリが映画に寄せたコメント

私はこの映画が大好き。私自身と私の日常をありのままに映しているから。私たち若者が面白半分で学校ストライキをやっているわけではないということを、映画を見た人に分かってほしい。

私たちが抗議活動をしているのは、他に選択肢がないから。私が学校ストライキを始めたことで、色々なことが起こったのは確かだけど、残念ながら私たちはまだ出発点から先には進んでいない。今はまだ必要な変化や問題意識の高まりすらもまったく見えてきていない。

とにかく私たちが社会に求めているのは、気候変動を危機として捉え、安全な未来を守ってほしいということだけ。映画を見れば、その実現までどれ程遠いのか、“もう時間がない”という科学的なメッセージが全く伝わっていないということも分かってもらえるはず。
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