そんな昔からあったのかという地動説みたいな映画──刑務所仲間のルイとエミールがオートメーション化された工場を主な舞台にわちゃわちゃするコメディ映画。大量生産×コメディと言えばチャップリン『モダン・タイムス』(1936)やタチ『プレイタイム』(1967)が思い浮かぶが、先に本作があったとは知らなかった。主題の先取り感に加えてセットや美術も綺麗で、これが1931年製作とは信じられない(たぶん4Kリマスター版で観たことも手伝って)。無一文での脱獄で始まり無一文での脱走で終わる、工場の組み立てラインで始まり工場のオートメーションで終わる、という円環構造も気持ちがいい。とはいえ、じゃあ『モダン・タイムス』や『プレイタイム』と同じように突き抜けた傑作かというとそこまでではない印象。ギャグ、ドラマ、セット、編集、どれも若干物足りなく感じてしまうのは、本作が後の社会派コメディ映画に影響を与えまくった結果の名誉の陳腐性なのかもしれない。ともかく先駆性の驚きはピカイチ。
【死ぬまでに観たい映画1001本(第五版)】
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