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最後の決闘裁判のwakiのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.5
カルージュ、ル・グリ、マルグリットの視点で「真実」が語られる三部構成になっていて、それが効果的に見る者を混乱させ、人が何を見ていて何を見ていない(思い込んでいる)かを浮き彫りにさせていた。
息が詰まるほど悲惨で怒りに震えてしまうけれど、一貫して真っ当な倫理観で作られているのが分かるから見続けることができた。
ただ必然性があるとはいえ、直接的な性的暴行の描写があるので観賞にはかなりの覚悟と注意が必要。このシーンの意義に関しては賛否両論あるし、正直かなりしんどかったがここまで直接的な描写をしなければならなかったのは「彼女の幻想では?」と言って信じないクソ野郎が存在する現実があるからだろう。本当にクソだ。
マット・デイモンもアダム・ドライバーも凄かったが、ジョディ・カマーがなんといっても素晴らしかった。特に終盤にかけての息遣いに自立した女性の眼力。
そして、血湧き肉躍る歴史ドラマや男と男の決闘を描いてきたリドリー・スコット監督が83歳にしてこんな作品を作れるとは思わなかった。長い歴史の中で踏み躙られ、黙らされてきた弱者に焦点を当てた、間違いなく"今"の視座を持った作品だった。リドスコ凄いよ……。
監修にジェンダー研究所とMeToo団体が入っていたのも良かったポイント。
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