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最後の決闘裁判のambiorixのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
社会的地位の高さと内面が釣り合っていないしょーもない「男」(ヤンホモストーカーが出てくる『デュエリスト/決闘者』や嫉妬深い皇帝が出てくる『グラディエーター』)と、男性優位な社会の中で翻弄されつつもしぶとく生きようとする「女」(『エイリアン』や『テルマ&ルイーズ』)、このふたつを合流させた本作は、ある意味リドリー・スコットのフィルモグラフィーのひとつの集大成といっていいと思う。
物語は三部構成。最初の一部でマット・デイモン演じるジャン、二部でアダム・ドライバー演じるジャックの視点から同じレイプ事件を語り、最後の三部で事件の被害者であるマルグリット(ジョディ・カマー)から真実が語られる。黒澤明の『羅生門』のように、その人の主観というフィルターを通すことで、同じ物事のもつ意味が万華鏡のようにくるくる変わっていくのが面白くもあり、それでいて「真実は藪の中」みたいな結論には逃げない。ただ、事件がぜんぶ奥さんの狂言だったって可能性はないのかな?そりゃ本編のジャックのように裁判で判決が出てもなお「俺はレイプなんかしてない」と言い張る卑劣なレイプ魔なんかごまんといるわけだし、レイプの模様も二つの視点からしっかり描かれているんだけど、それでも俺は「事件は奥さんのでっち上げで、ムカつく夫とストーカー男を懲らしめるためにやった」という解釈も捨てがたいと思うのだ。だったらやっぱり真実は藪の中なのか?
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