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最後の決闘裁判のrakanのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
14世紀、中世フランスを舞台にした映画。1386年のパリでおこなわれた最後の決闘裁判の実話を元にリドリー・スコットがメガホンをとった。

作品の構成は「藪の中」スタイルで、一つの事実が3人それぞれの視点によって繰り返され、徐々に真実が明らかになっていく。映画「怪物」と同じ手法だ。視点はカルージュ→ル・グリ→マルグリットと順々に変わっていく。こういう構成の場合、視点が変わるたびに真実が明らかになっていくので、本当はル・グリは強姦していないのではないか?マルグリットが黒幕ではないか?カルージュへの罠か?とか映画をみながら、ある種のどんでんがえしを予測する。

しかしなんとおどろくべきことに真実はあまり変わらないのだ!ただ微妙にニュアンスが変わっているだけなのだ。

たとえばマルグリット視点だとカルージュは妻を道具としか思っていない最低人間だとわかるし、ルグリは教養人でカルージュを想う気持ちもあったことが判明するし、強姦の場面ではル・グリ視点だとマイルドだが、マルグリッド視点だと本気で嫌がっていることがわかる。

ただ、どちらにしてもカルージュがやってることは大きくは変わってないし、ルグリは女好きで手段を選ばない人間で、結局マルグリットを襲っているのだ。

「おい!!ル・グリ!!」と思わず突っ込んだ人も多いのではないだろうか。自分はそうだった。

とても不思議なつくりだが、予測の裏切りをうまく突いたリドリースコットの老獪さというべきか。

最後の決闘裁判では、どっちが勝ってもマルグリットにはあまり良い人生が待ってないので、男2人が自分のために好き勝手に戦っているというのがまた滑稽なのだが、それはそれでとても見応えがある。ラストの敗者への仕打ちが凄惨で、暗黒の中世がうきぼりになった。

最後の最後まで緊張感のある物語で、かなり楽しめた。
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