ユウサク

カード・カウンターのユウサクのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
3.7
普通に楽しみにしてたんだけどポール・シュレイダーがジャンヌ・ディエルマンが一位になったことに対して余計なこと言ってたので「一応見に行くか……」くらいのテンションに下がってた。都内4館ってかなり少ないけど『魂のゆくえ』もこんなもんだったんだろうか。

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ぶっきらぼうで簡潔なOPから良い。文字はパッと出してパッと消す、映画は全部これでいいのにな。OP後の映像の質感は完全にデジタル撮影だけど演出、撮影、編集全部80年代のそれで、まあカッコいい。そう思ってると割とアグレッシブな撮影や音楽使いも出てきて監督なりに挑戦はしてるのかなって気もしてくる。抑制の効きまくった劇伴も良い(OPで流れる曲のトラック名が”Title Card”なの粋)。
「またどうせタクシードライバーと同じ話なんでしょ」とは思ってたし実際そういう感じで進むんだけど、基本引き算の映画だから飽きないし中盤に差し掛かってくると「お金があれば解決できるよね」っていう身も蓋もない、しかし確かな解答が提示されるのでそういう語り直しなのかなと思った。
しかし揺り戻しのようにアクシデントが起こって「あー、また暴力だ……」ってなるけど暗い部屋をズームアウトしていくカットに入った時に「このまま終われば語り直した意味はあるぞ」と思ったんだけどそうはならず、手癖のように余計な部分をつけたして結局タクシードライバーと同じ映画になってしまってて残念だった。あそこで終わってればタクシードライバーを「カッコいい男の映画」と思ってる人たちの目を覚まさせる良い機会になったと思うんだけどな。なんなんだあのチープなエンドロールは……。

そういう感じだったので映画のガワはまあまあ好きな方かなと思うんだけど、雑なアジア人いじりで-0.2点。メインキャストにも入れずにああやって茶化してくるのめちゃくちゃ不愉快なんだけど、間違った愛情表現としてやってる可能性もあってタチが悪い。イルミネーションの中を手繋いで歩くっていう日本の深夜ドラマみたいな異常なシーンがあったけど、なんたらかんたらジャポニカスっていうたぶん日本の植物の名前が書かれたプレートをわざわざ映してたし、エキストラもアジア系カップルにしてたのであれもアジアの「エキゾチックな」描写として入れてるんだろうが無意識な蔑視の露呈になってしまっている。腹立ちます。
ユウサク

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