ただならない。冒頭の刑務所の構図からしてめちゃくちゃ格好いい。ただならぬことがこれから始まる予感。こんなオスカー・アイザック観たことないと思うほど格好いい。戦争時にあんな経験を負っていたら、そりゃおかしくもなるだろうというただならなさを、神経症的なこだわり(例:室内へのこだわり!)や、ルーティーンへの律儀さや、頭脳明晰なカード・カウンターの技術などなどによって、1本の細い線を綱渡りしているかのような緊張感で描いている。
あのとき以来、自分をずっと律してきた男は(それは自罰的ともいえる)は、青年と出会って変わることができるのか? (その出会い、同じ時に2人の男に遭遇するのも巧い描き方だなって思う。)(擬似的な父子の関係など、同じくギャンブラーが主役であったPTAの『ハードエイト』も思い出す)。青年にまっとうな方へ進んでほしいと心底願ったときのあの強制執行的な方法にも驚愕したけど、とにかく、緊張の糸を弛緩させない描写には恐れ入ってしまった。USAUSAと五月蠅い男のことなんかも結局どうでもよいというのもナイス。だけど、最後のETみたいなんはちょっと甘すぎると思わないこともないですわよ
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メモ
・タクシードライバーはベトナム戦争、今作はイラク戦争
・アブグレイブ刑務所
・ミネソタ・ファッツという単語が出てきて、わかる!ってなった
〈追記〉2024年11月
『シンシナティ・キッド』を観た後で、もう一度観たくなって再鑑賞した。やっぱり凄い映画だと思う。
『ハスラー』・『ハードエイト』・『シンシナティ・キッド』などギャンブル映画の王道を継承しつつ、イラク戦争の傷跡は決して過去のものになっていないことへの警鐘というのか、イラク戦争への悔悟というのか、それをなんと称したらよくわからないけれどもそういった思いも込めた、ただならないけどそのただならなさこそが真っ当であるような映画なのだと思った。