りっく

カード・カウンターのりっくのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
4.0
ギャンブラーでありながらも、勝ち負けの快楽に身を浸すことも、身を堕とすこともなく、かといってプロフェッショナリズムを感じるわけでもなく、ただ無気力で同じルーティーンを繰り返すジェイソン・アイザックス演じる男の佇まいがとにかく素晴らしい。

それでいて、家具を白い布でぐるぐる巻きにされた男が宿泊するモーテルの一室の異様な光景を引き画で挿入するなど、淡々とした日常の中での狂気性、その狂気と贖罪の意識で辿り着いたギャンブラーの有り様。観客の想像力を刺激するショットを効果的でありながらも必要最小限にとどめる慎ましさと、それが終盤に効いてくるポール・シュレイダーの円熟味を増した構成と演出の妙にグイグイ引き込まれる。

罪を一手に背負わされた男は、個人的な復讐心に苛まれるのではなく、自分も同罪であると認めたうえで、擬似的な父子のような関係を築く青年のために、罪の根源と向き合い、鉄槌を下す。それは微かに自らを罪の意識から解放することであり、ラストの面会室でガラス越しに指と指を重ね合わせるショットへと帰結する流れが美しく、人間らしく生きることの諦念と渇望のドラマが見事に浮かび上がってくる。
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