垂直落下式サミング

LAMB/ラムの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.5
ある日、アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かの誕生を目撃する。その存在をアダと名付け育て始めるが…。
吹き荒ぶ吹雪のなか、家畜小屋の扉が何者かに開かれて外の冷気が入り込むと、羊ちゃんたちは闇の奥の来訪者を見つめながら白い鼻息を小気味よくし、リズミカルにフガフガとメエメエと喉をならしていて、とても愛らしかった。
登場人物は極端に少なく、犬とか猫とか、主に動物たちがかわいい。ポツンと一軒家で動物たちと一緒に暮らす羊飼い夫婦の営みを、しっかりとみせていく。耳タグつけるところ、俳優さんがやってるのか、ぞわってしちゃったな。
最初のほうは登場人物たちがほとんど喋らない。夫婦が野山に出てトラクターに乗っていたり家畜の世話をしているときは、他の生き物たちと同列の存在として生きているのだけれど、これが言葉を発してしまうと、「にんげん」になってしまう。
でも、このふたりは「つがい」ではなくあくまでも「夫婦」なんだなと。その厄介さが、彼らに祝福を与え、同時に破滅をもたらす。
アダは、頭と片腕が羊の女の子。服を着ると羊の頭の幼い子供が歩いているように見えて、言葉は話さないけれど、何を言っているかはわかるようで、大人にも懐く。ちょこんとすわるところとか、音楽で踊るところとか、わりと可愛らしい。同時に不気味でもある。
でも、ラストはなあ…。じっくり時間をかけてそこそこ長いはなしを聞かされた割には、なんかベタな妖怪っぽいヤツがやってくるのがガッカリ。
怒った顔してんのも、なんか違うもんな。こういうのは対話不能の存在だから怖いのだし。それに、猟銃とか持ってるし…。昔ながらのオバケなんだろうから、人間の武器とか使うのはやめてほしいな。素手でドシュッ!でいいじゃん。ゾオン系は六式使えよ。