・ジャンル
実話ベース/サイコスリラー/サスペンス
・あらすじ
17歳の少女サラの夢は家を出て恋人のクリスと逃避行の旅に出る事だった
理由はただ一つ、支配的な父ドンから逃れ自由を手にする為である
外出や交友関係に至るまで全てがドンの許可を得なければならない生活は窮屈その物
時に反抗しながらもサラはその苦しみに必死に耐え抜いてきた
そしていよいよ高校を卒業し誕生日が迫る頃、事件は起きる
サラの“計画”を知ったドンの手で自宅の地下室へと閉じ込められてしまったのだ
窓もなく壁が厚いせいで叫び声も届かない閉鎖空間での暮らしはこうして始まった
逆らえば暴力を振るわれ、更には犯され続けるサラ
やがて彼女は父との子を身籠るがそれでも解放は許されない
サラは産まれてきた2人の子供を世話しながらどうにか脱出の機会を伺うが無情にも何も出来ぬまま時は経ち続け…
・感想
父親ヨーゼフ・フリッツルによって娘エリーザベトが24年間に渡って自宅の地下室に監禁され、あらゆる虐待を受けたというオーストリアの通称”フリッツル事件“を題材に製作されたテレビ映画作品
同じく監禁物の作品「ペット」を昨夜観たので同じテーマの作品として鑑賞
実話が元になっているという事がどこまでも重くのしかかって来る悲惨なストーリーはなかなかに辛い物だった
暴力、レイプ、モラハラが日常的に行われる地下室
何も知らずサラの帰りを待ち続ける母と姉、そして恋人のクリス
この2つの軸がすれ違う様に織りなされていくのがまた事の凄惨さを際立てていた
こういう事が起き得るという事実を伝え続ける為には意義深い作品だった様に思う
ただ一方でテレビ映画、それも昼ドラ的な立ち位置にある局の制作という事もあって生々しい描写が最小限に抑えられていたのは実話ベースだからこそどうなのかと感じた
レイプにせよ暴力にせよ生活空間の汚さにせよもっとその物ずばり描くべきだったんじゃないか、と
加えて24年間にも渡って監禁され続けたにも関わらずサラは勿論のこと脱出後の母アイリーンや姉エイミー等に老化が僅かにしか見て取れなかったのも残念
長過ぎる地獄の様な時間を表現する上でせめてそこだけはもっと頑張るべきだったのでは?
恋人クリスは比較的老化が見えたので余計にそれが悪目立ちしていた印象を受けた
世界的にも類を見ない異常な事件を描くならやっぱりちゃんとした映画として製作されて欲しかったというのが正直なところ
それであれば前述の様な問題点は恐らく払拭されていただろうし…
事の悲惨さがソフトに見えてしまっては本末転倒な訳で…
またラストもあっさりとしたハッピーエンドとなっていたけど脱出後にも実際は様々な苦しみがあったであろう事は想像に難くない
それも含めて描く事でようやく実話を題材とする大義が成されるんじゃないか?とも思う
とはいえ後世に語り継ぐべき悲劇である事は間違いないので幅広く観られて欲しい作品ではあった
Wikiの記事を読む限りやや実際よりもソフトに描かれてこそいたものの大筋はさほど変わらないので興味がある方は是非