ヒノモト

マンディブル 2人の男と巨大なハエのヒノモトのレビュー・感想・評価

3.9
9月に新作『地下室のヘンな穴』公開を控えたカンタン・デュビュー監督の2020年に発表したファンタジー・コメディをJAIHOで観ました。

一見、ぐだぐだしたコメディに見えるのですが、風刺にエッジが効いてて、意外と面白かったです。

物語は、スーツケースを運ぶ仕事を引き受けたマヌは親友の親友のジャン・ギャブを誘い、適当に盗んだ車で目的地に向かうが、トランクに巨大なハエを見つけ、そのハエを調教して盗みを働くことを思いつくというお話。

巨大なハエの造形や所作のリアルさは、以前観た「ハッチング」などでも使われたアニメーション3D技術が使われているようですが、クリーチャー的気持ち悪さはなく、クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」のような肉体ホラーでもなく、可愛くはないですが小動物的なフォルム。

今作が最も面白かったのは、車がガス欠したことで立ち寄った同級生の別荘での顛末でした。

配信が始まったばかりなので、ネタバレしませんが、ここで一緒にバカンスを楽しんでいる1人にスキーの事故で脳に障害を負い、感情のコントロールができない女性が起こす行動とその顛末の流れが、シニカルすぎて日本映画では絶対できないような処理の仕方になっていて、この場面がとにかく面白すぎました。

ただ、この表現を日本的見方で見ると、不快に感じる方もいるかと思うので、全面的におすすめできないところもあるのですが、寛大な気持ちで見てほしいです。

全体としては、周囲から見たらダメな2人が、その日暮らしで、目的から逸れていくのをただ眺めているのが、コメディとしてやりすぎてなくて、起きてることの重大さを斜めから見ている雰囲気が常にあって、ゆるいながらも際どい視点を持ったコメディだと思いました。

9月公開の『地下室のヘンな穴』も楽しみですが、カンヌで深夜に上映された変な戦隊ヒーロー映画も、早く日本で公開してほしいです。
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