東雲

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲の東雲のレビュー・感想・評価

4.2
幼い頃に観た、しんのすけが東京タワーのような塔を登っていくシーンと「なんだか怖いな」という感情。それだけが頭の中に強烈な印象として残っていた。いつの間にかNetflixで配信されていることに今日気付き鑑賞。子供向けのアニメながらこの映画に関してはやはり不気味で...小汚い画質、今は亡きソ連というワード、私自身が生まれていないくらい昔の漫才、モノクロのテレビ、下町...この風景に、というよりはこの映画を初めて観た『あの頃』に対して郷愁を覚えるのに時間はかからなかった。

本や映画といったものは、観る年齢によって感じ方が変わってくる。2回目の今回でまず思ったのは「自分にもし子供ができたらまた観てみたいな」ということ。家族愛がテーマだと思うので。「なんだか怖いな」という気持ちは薄れていた。きっと怖かったのは作中で親が皆どこかへ行ってしまったからだろう。「もし現実でこうなったら」と子供ながらに心配していたのだろうか。そんな私も今やすっかりオトナと呼ばれる年齢になってしまった。

自分たちの理想の為に今の子供達の未来を犠牲にしてでも時間を巻き戻そうとした悪役に対して、タワーを登り切りボロボロになったしんのすけが言い放った「オラだって大人になりたい」という台詞は私の涙腺を忽ち崩壊させた。『あの頃』の私も君と同じことを思っていたよ。

この映画を観ている時だけはもしかすると私も『あの頃』の匂いに取り憑かれていたのかもしれない。そんな映画だった。
東雲

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