都部

ウエスト・エンド殺人事件の都部のレビュー・感想・評価

ウエスト・エンド殺人事件(2022年製作の映画)
2.5
如何にもクリスティのオタクが書いたような目配せを感じる筋書きは鼻持ちならない気分にさせられますが、パロディコメディを趣きとするミステリ作品としても本作には不足が多く見られ、90分強というお手軽な映像作品としての軽妙さすらも失っている印象。

基本的に本作のコメディ部分は"肩透かし"により構成されていて、それ自体はナンセンスなコメディとして受け入れられるのですが、タイミングと見せ方がそこまで面白くないので話を無駄に鈍重化させているだけに終始しているのが惜しいですね。警部と巡査のコンビが織り成す喜劇的掛け合いも引き出しが凡庸で、キャラの立たせ方も些細な味付けの域を出ることなく、特徴的な語り部として成立しているかは甚だ怪しいかと。

また事件の犯人も、ミステリ慣れしていれば序盤も序盤から察せられる見せ方で、『では何故 その人物が犯人なのか?』という捜査によるホワイダニットの掘り下げに期待しても物語は複雑化の為に横道に逸れるばかりで、最後に雑な動機の回収と共に済ませられるのが非常に残念でした。フーダニットやるにしてももう少し物語を面白くしてほしい……。

演出面でウェス・アンダーソンを想起させるという批評も見られますが、洗練された画面の構築とそれに沿ったテンポ感という点で抜けを感じるのが本作で、小規模な緩い笑いを喜劇的な語りや画と共に提供する前述の監督作品とはやはり技巧的な差があり、よくてエピゴネーン的な受け取り方は免れないようにも感じられました。
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