なつこ

スワンソングのなつこのレビュー・感想・評価

スワンソング(2021年製作の映画)
3.8
Swan Song :(芸術家などの)最後の作品・活動

これは1人の老人が過去のしこりや悲しみを受入れながら、自分の中の誇りと尊厳、そして喜びを取り戻すまでのロードムービーだ。

かつてカリスマ美容師だったパットも今は介護老人ホームで紙ナプキンを集めるだけの日々。
そんな彼に、ある人の遺言で死化粧をして欲しいと弁護士が尋ねてくる。
依頼主は昔、顧客であり友人だったリタ。

一度は断るも、パットは一人で歩いて葬儀場へ向かう。

かつて自分を知らない人はいなかった、サンダスキーの街。
でも今は人も建物もすっかり変わってしまっていた。
絶対必要だとするヴィヴァンテという整髪料は、もう生産されていない。
このゲイバーも閉店されるらしい。
よく知る街なのに誰も自分を知らない。

だから、洋服屋の女性とパットが思い出を語るシーンは、なんだか私まで嬉しくなってしまった。

ユーニスとのシーンは切なくてたまらなかったけど、前を向けという彼の言葉は、きっとパット胸の奥から出てきた言葉なんだと思う。

成功も喜びも悲しみも…パットの人生が全部詰まった街、この街が彼の全て。
ゲイバーでのパットは本当に楽しそうだったし、乱れてしまったカツラを直してあげる姿は生き生きとしてた。
シャンデリアは若干やりすぎだけど🤣

色々遠回りをしながら、わだかまりのある人、初めて会う人、彼らと接する度に、パットが自分の色を取り戻していくように見えた。

葬儀場でのリタの孫とのシーン…どこまで聞いていたのかは分からないけど、それがいい、とても良いシーンだった。

静かだけど素敵な作品でした。

ちょっとネタバレ
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「リタは靴の趣味がいい」って言ってたもんね笑
ハサミを棺桶に入れたのは「もうこれが最後の仕事」って分かってたからだと思ってたんだけど、物々交換だったのかも笑

そして唯一それに気付いて笑ってくれた孫。パットの人柄を楽しんでくれる人に、最後に出会えてよかった。

過去のモヤモヤとちゃんと向き合うことができて、最後の大仕事をやり遂げた。
幸せな最期だったと、ハッピーエンドだったと、エンドロール後のパットを観て思いました。
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