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シチリア!シチリア!のodyssのレビュー・感想・評価

シチリア!シチリア!(2009年製作の映画)
3.5
【邯鄲の夢・イタリア版】

「一期は夢よただ狂え」という言葉がありますけど、イタリアでそれをやったらこうなるのかな、といったところでしょう。或いは「邯鄲の夢」かな。

第二次大戦頃から戦後にかけてのシチリアの小さな町を舞台に、そこに生まれ育った男の物語。貧しい生まれで、戦後はイタリア共産党に入って政治活動、愛する女と強引に結婚して何人も子供を設けて・・・・というようなお話です。

この映画、しかし、「ある男の一生」ものだと思うと間違えます。テンポが非常に早く、物事の起承転結とか、作中人物の心情なんかが丁寧にたどられるわけではありません。そう、老いて死にかかった男が幼年期や少年期・青年期を回想すればこんなふうになるのかな、というような作りになっています。映画の結びも、そうした印象を肯ってくれる。その辺が、この映画の見事なところだと思うんですね。監督、うまいな、と。

そして、こういう作りを日本を舞台にしてやったら貧乏くさいし惨めったらしく湿っぽくてやりきれないと思うでしょうけど、シチリアの、戦後になってもメインストリートが舗装されてなくて強風の日には砂埃を舞いあげる土地にあっては、貧乏だけどどこかカラッとしていて絵になるのです。これ、イタリアならでは、じゃないでしょうか。

結論としては、イタリア万歳、シチリア万歳、ということで(笑)。
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