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生田斗真 挑むのdm10foreverのレビュー・感想・評価

生田斗真 挑む(2022年製作の映画)
4.1
【『挑む』に「挑む」】

俳優生田斗真が、高校時代からの親友尾上松也の舞台「新作歌舞伎『挑む』」に出演するまでの1ヵ月半を追ったドキュメンタリー作品。

観る前の正直な気持ちを言うと「生田斗真がカッコいいのは間違いないんだけど、彼の顔って歌舞伎に向いているのかな・・・」っていう、上から目線の余計なお世話(笑)。
歌舞伎役者さんって、割と「『The日本人顔』的なあっさり系の顔立ちの人が多いイメージ(あくまでもイメージね)」があって、そう考えると生田斗真って目鼻立ちがクッキリパッチリの、どちらかというと欧米風というか若干日本人離れした雰囲気があるんですよね(あくまでもイメージね)。

だから、どんだけ白く塗りつぶしても根本的に可愛い目は隠せないから、隈取とか似合うのかな~なんて思ったりもして・・・。

・・・ってな感じで鑑賞。

・・・いや、え?かっこいい!
やっぱり彼は役者ですわ。
勝手に心配してゴメンなさい。

このドキュメンタリー自体は87分と、猛稽古の内容をギュッと凝縮しているから伝わりにくい部分もあるかもしれないけど、それでも十分「とんでもないチャレンジ」をしているんだなってことはビンビンに伝わってくる。
決して決して「めちゃイケのオファーシリーズ」のようなオチではありません。

いやゆる「ドラマ(映画)俳優」も「歌舞伎役者」も『舞台の上で演じる』という点で言えば、大きな括りでの「同業」かもしれないけど、それこそ全く形の違う世界だし、何代にも渡って芸を極めてきた伝統芸というものは一朝一夕でマスター出来るようなものではない。
かといって上っ面の真似事を本家の前で披露するなんて、下手したら「地雷原でスキップする」よりも度胸がいるよ。
でも、やっぱりそれをやり遂げたのは尾上松也(イントネーションはまつや⤵ではなくまつや⤴)との12年来の友情や、松也の父尾上松助へのリスペクト、そして自身の俳優としての飽くなき向上心。

僕自身はそこまで歌舞伎に造詣が深いわけでもないし、たまに日曜日の午後9時くらいからEテレでやってるのを流し観しているくらいかな・・・。
生の舞台は一度も観たことはないし。
それこそ、何言ってるかわからないでしょ?
「ならば~」って言う台詞すらも「ぬぁるぁぶぁ~」みたいな。
でも、シアター歌舞伎とかで中村勘三郎さん(故人)のやっていた新しいアレンジのお陰でだいぶ敷居も低くなったし、楽しめるようにもなってきた。

だから今回も台詞自体は現代風にアレンジされている部分も多く、生田斗真の台詞も普通にわかる。

でも、やっぱり歌舞伎特有の美しい所作だけはアレンジのしようがない部分だし、その動きや立ち居振る舞いこそが歌舞伎の醍醐味でもあるから、ここをどれくらい表現できるか?っていうところにかかっているんだろうね。
特に今回は1ヶ月半しか稽古時間もない中でどこまで突き詰めることが出来るのか・・・。

きっと欲を言えば切がないのだと思う。
それこそ、突き詰めて突き詰めて、それを何代も受け継いで芸を極めていく世界だから。
だから「これが歌舞伎だ!」というものが全て見せることが出来なかったとしても、「俳優生田斗真の本気」をまざまざと見せ付けられたような気がした。

稽古中に何度も練習した六方という歌舞伎特有の所作が徐々に形になっていき、本番でビシッと決ったときは鳥肌が立つくらいに感動した。

もしかしたら、企画の段階では客寄せパンダ的な意味合いもゼロではなかったのかもしれない。
「下北の劇場で生田斗真が出演する歌舞伎の舞台」と言われれば、若い層のお客さんも観に来るだろう。
でも、今回実際に生田斗真が走りきった1ヶ月半は決して生半可なものではなかったし、出来上がったものを観れば茶化すような気なんて到底起きない。
千秋楽の挨拶で、長いこと尾上一門にいる尾上徳松さんが流した涙が全てを物語っていたような気がする。

これは本編(NETFLIX)も観なきゃだめなやつだ・・・。
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