わか

笑いのカイブツのわかのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.9
笑いに人生を賭けてる人はいるけど、笑いに命を賭けてる人はそういないと思う。

考えたネタはノートだけでは足りず、紙束まで文字がびっしり。
寝ても覚めても頭にあるのはネタのことだけ、仕事はおろかバイトですらまともに出来ない彼の姿はまさに笑いに取り憑かれたカイブツそのものだった。

ただ、いくらネタが書けようと、誰よりも笑いに対して本気で向き合っていようとも、それだけでやっていけるほど人生甘くないわけで。。

夢を追い求める過程でぶつかる壁や挫折、それが彼にとっては笑い以前にちゃんと社会人らしい生活を送ることであって、観ていてそれは最低限できなきゃダメだろと感じる瞬間が多々あったんだけど、そう感じてる自分はもしかすると枠にハマって楽に生きようとしているだけなのかもと感じた。

いくつか気になったことがあって、1つはいつから、何がきっかけで彼があんな風になったのか、そして彼の母はそんな彼を否定せずにそのまま育てられたのかってこと。
そして、もう一つはなぜ彼は芸人ではなく作家になりたかったのか。

自分のネタが面白いという絶対的な自身があったなら、自分がプレイヤーになろうとは思わなかったのかなと。
コミュニケーションが全然取れないし、人前に立って喋る姿を想像はできないとはいえ、そう考えたときにますます彼の生い立ちが気になってしまった。

もしかすると、そんな性格でも関係なく面白さだけが評価されるネタ職人だったからこそのめり込んだのかなとも思った。

劇中で自分が面白いと思って作ったネタを、自分が面白いと思った人たちがやってくれて、観客の生のリアクションを感じるシーンがある。
その時多分初めて彼の中で芽生えた感情があって、そこからラストまでで彼の内面がどんどん変化していくのを感じるのがとても面白かった。

ラジオをここ数年で聞き始めて、劇中のラジオ仲野太賀の相方がちょっと春日の声に似てるなとか、作家がサトミツさんっぽいなとか思いながら観てたら、本当にオードリーとのお話だったと知ってびっくりした。

分かってた上で観たら、多分自分はオードリー寄りで観てしまってたと思うから、純粋に一人の不器用な人間の人間関係不得意を観られて良かったと思う。
わか

わか