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笑いのカイブツのmanamiのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
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お笑い、ネタ、売れたい、何年か前にネット上で流行った脳内メーカーってやつをもしツチヤタカユキにやらせたら、そんな言葉しか並ばないんじゃないんだろうか。とにかく笑いで認められたい、それさえ叶えば他はどうでもいいという生き方。
テレビのネタ投稿番組『デジタル大喜利』(元ネタはもちろん『着信御礼!ケータイ大喜利』ね、観てたわー、懐かしいわー、キャストも本家をしっかりなぞってるねー)に5年間メールを送り続けて「レジェンド」の称号を手にし、劇場(名言はしてないけど、「笑いの殿堂」ってセリフもあるし明らかに吉本)付きの作家として1年。
さらにラジオ(映画内で取り上げられてたのは『オールナイトジャパン』、これは名前を変える意味あるんだろうかってレベルで本家のまま)のハガキ職人に3年の月日を費やす。
修学旅行にも卒業式にも不参加ということは、そもそも学校にも行っていなかったんだろうね。なにしろ「人間関係不得意」なんだものね。
いわゆる「コミュ障」にもいろいろなパターンが存在するけど、ツチヤの場合は、自分から周りに攻撃を仕掛けるつもりはなくても、自分の意見を述べようとすると配慮とか思いやりとか忖度とかがいっさいできないってタイプ。
売れない芸人のギャグでしつこく猫の真似をやってたけど、ツチヤはずっとネズミだったな、「窮鼠猫を噛む」の、ネズミ。追い詰められて逃げ場がなくなって、精一杯牙をむくしかその場を切り抜ける術を知らない。
本当は彼に手を差し伸べてくれてる人たちが何人もいたのに。その手にも噛みついたり振り払ったりしてしまう。大阪時代のそんな人たちとの再会からのくだりはあまりにも痛々しい。
ツチヤはまさに身命を賭して笑いを追い求めてるけど、自分自身は笑わない。劇中でツチヤが笑うのは、「変われない自分の目の前にいる、変わっていく彼女」との落差に気づいて自虐的にハハハと声を出す場面だけじゃないかな。
岡山天音、菅田将暉、仲野太賀、私の大好きな役者さん揃い踏みで幸せすぎるし、言わずもがなみんな名演技すぎる。できることなら3人が会するシーンも見たかったけど、それはまたいつか他の作品で叶ってほしい。
漫才指導として令和ロマンがクレジットされてたね。すごい、先見の明。

10(1720)
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