嶽花征樹

女神の継承の嶽花征樹のレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
4.0
おぞましい、なぜにここまでおぞましい。

タイの土着信仰をモチーフにしており、終始おどろおどろしい雰囲気があり、モキュメンタリー形式によりリアルさが増している印象です。

R18+になってる割にはゴア表現はひどくなくて(見終えればR18+指定の理由になってるシーンが思いつく感じ)、極力気持ち悪くしないようにはしてる印象ですが、ホラー映画でいやなシーンはほぼ網羅されてるので、苦手な人は避けておいた方がいいでしょう。

特に動物がひどい目にあうのが苦手は人は見るのやめたほうがいいですね。犬の散歩シーンのあとで「犬を飼ってるのに犬肉を買って食べるのは矛盾してません?」ってインタビューに対して「鯉を飼ってる人も魚を食べるでしょ?」って返答が来た時点で嫌な予感しかしてませんでしたが、想像以上にキツかったです。

スタッフロール最後に「実際は動物に危害を加えてはいません」って注意書きが出てくるんですけど、「え、ほんとに?!」って思っちゃうくらいに臨場感があって、人によってはトラウマになるんじゃないでしょうか。逆に言うと、スタッフロールの最後にそんな脚注をわざわざ入れるくらいの描写があると思ってください。

『コクソン』みたいに物語の着地点が見えず翻弄され、見終えたあとも考察したくなるような作りというわけではなく、『マリグナント』みたいな強烈な種明かしがあるわけでもないんですけれど、それでも最後まで退屈せずに不穏な雰囲気で徐々にひっぱっていき、終盤は物語が加速する勢いが良かったですね。

主演女優の演技力も素晴らしく鬼気迫るものがあり、モキュメンタリー形式であることを上手く活かした絵作りも効果的でした。暗視画面がグロさを緩和させる効用もあれば、より一層の恐怖を彩る効用があるあたりも上手かったと思います。

ラストシーン直前の光の入り方、およびその後の独白が深く染み入りました。祈りの先に、救いはあったのか。

モキュメンタリー形式の傑作が、また一つ。
嶽花征樹

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