トニー・スコット初監督作。アンブローズ・ビアスの短編小説「行方不明のひとり」が原作でほぼ忠実に映像化しているが、北軍の斥候が井戸の底の死体を覗き見る展開はオリジナル。井戸という円筒は銃口のそれとして再来し、死をめぐるトニスコ的躁鬱モンタージュのきっかけとなる。
偵察の為森の中を通り敵陣に接近するスティーヴン・エドワーズの進行を主にロング捉えた前半と、砲弾を受け崩れた建物の瓦礫に埋もれ眼前にライフルの銃口が迫る身動きできない状態をクローズアップで捉えた後半という対照的なショット構成。
森の中を通り抜け、撤退し始めている南軍に察知されないよう忍足で移動し、狙撃に適切な箇所に陣取るまでのシークエンスが素晴らしい。川のほとりで二人の敵兵を見つけ接近行動を開始した瞬間、主観からロングへ切り替わり、ゆっくり右にパンすると大勢の屯する敵兵が映る。
「(…)距離を思い切り際立たせつつ敵味方の配置を視覚化してみせる彼の空間処理は、ときに忘れ難い瞬間を視界に浮上させる。」と蓮實重彦は『マイ・ボディガード』評の中で書いているが、デビュー作の短編の時点でトニー・スコットはこれ程の演出をやってみせている。