イトウモ

アステロイド・シティのイトウモのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
コロナ禍から着想を得たであろう「閉鎖空間」のテーマを描くのに西部劇的な荒野を選ぶのがいかにもシネフィル的で、その閉鎖をファーストコンタクトのテーマで開くのがいかにもアメリカ人的だ。

という感じで、ウェス・アンダーソン久々の直球のアメリカ噺。
ちょっとウェットだった。
ダージリン急行や、ライフ・アクアティック的な家族のメロドラマに回帰しており、画面の暴力性、偏執性は控えめである。

子どもが歌い出すシークエンスと、最初と最後の列車のシークエンスが良かったかな。あと壊れたエンジンの生々しい蠢き。
トムハンクスを出して子どもに「あなた、誰?」って言わせるとか、マーゴット・ロビーを写真で登場させるとかのセンスはやはり冴え渡る。マーゴット・ロビーの使い方にやはり、一番ぐっときたかもしれない。
死んでしまった人が、フィクションの中だけでまだ生きている(ように見える)映画は数あれど、この映画はその逆である。これは非常に巧いだけでなく、考えさせられる。


ギリシャのCINE THISIOで鑑賞したことがなによりの思い出になった