Violet

硫黄島からの手紙のVioletのネタバレレビュー・内容・結末

硫黄島からの手紙(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


2時間20分、あっという間だった。
数え切れない人が亡くなって
両国が得られたものはあったのだろうか。
失ったものばかりが山のように積み上がっている光景をまざまざと見せられたような作品だった。

栗林の人命や戦力を無駄にせず戦おうとする考えと、伊藤らの昔ながらの玉砕精神の考え方とのぶつかり合いがリアルだった。

何人もの日本人の無意味な死が苦しいほどに幾度となく描かれていた。
玉砕前提の突撃であるバンザイ突撃や、手榴弾を使った自決。
投降しようとしたら味方であるはずの日本人から銃を向けられ殺されてしまうのだから恐ろしい。
「隊と共に死ぬ」ことが「お国のため」であり、生きて別の部隊に合流したら「なぜ生きている!なぜ逃げてきた!」とその場で殺されてしまう。この当時の日本人は正気の沙汰ではないと思う。本当に。

日本人の「死」に対する美学はなぜここまでに及ぶのだろう。

Samの母親からの手紙を読んで、アメリカ人も日本人と同じ血の通った人間であることに気づく。皆それぞれに大切な人がいて、その兵士の帰りを待っている人々がいる。こんな当たり前のことを全世界の人々が正しく認識すれば、戦争なんて起こらないはずなのに。どうしてずっと無くならないのだろう。そう考えずにはいられない。





















最近「若年層における死因1位が「自殺」であるのは、先進国で日本のみ」というニュースを目にした。どうしてだろうとずっとずっと考えていた。本作を見て、とても不謹慎なことではあるけれど、ずっと昔の戦国時代の「自害」からもわかるように、そういう「死の美学」は日本人の遺伝子に備わってしまっているのだろうかと考えた。現代の日本で自ら命を落とすことを選択する人々はもちろん、抱えられないほどの苦しいものがあったのだろうけれど。
この文章で辛い気持ちや嫌な気持ちになった方がいたら、申し訳ありません。
Violet

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