佳子

余命10年の佳子のレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
3.9
「まつりちゃん、頑張ったね。」

世界の中心で愛は叫べなかったし、余命1ヶ月の花嫁での嘘(制作側の)に腹が立ったし、君の膵臓は食べたくなかったけど、この作品は普通に涙が堪えられなかった。

実際に余命10年宣告を受けながら書かれた原作があるからだろう。
死を常に横において生きなければならない若者の諦めや悔しさや葛藤が、作り物ではなかった。

旅行、もっと行ってみたかった。
もっと、友達と遊びたかった。
結婚だってしてみたかった。

そう言いながら泣くまつりを抱きしめながら頭を撫ぜ続ける母。静かに涙を流す父。
しっかりした姉の黒木華の演技は圧巻。

最期を迎えるその時に、大切な人に「死なないで」と泣いてすがられるのではなく、「頑張ったね」と微笑んで欲しい。
悩んで苦しんで泣いて、どんどん酷くなる肉体的な辛さとずっとずっと戦って、死なないでと言われたら悲しい。
頑張ったんだよ。だから笑顔で。
どんなに辛くてもそれが優しさだと思う。

彼が1人で見上げる桜🌸が美しかった。

2023-80
佳子

佳子