垂直落下式サミング

キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
ファルコンが二匹になって嬉しかった!
アベンジャーズでは、ファルコンがいちばん好き!初登場は痺れた。よれたネイビーのシャツにきたねえジーパン。足元はクロックスで決まりなコーディネートで、機械の羽を背負いグラサンをかけて鉄砲で戦う!超人揃いのアベンジャーズのなかにいて、常人に毛が生えた程度のおじさん。そこがいい!
キャプアメは、スーパーでアメージングな奴らがうようよいるなかで、盾と拳と高潔さで立ち向かうクラシカルなヒーローとして、魂の強さでみんなを引っ張っていく感じがよかった。そのソウルは、これまでチャカと羽で戦ってきたファルコンのなかに、しっかりと受け継がれていたのである。
初代キャプアメは、戦前男のスティーブ・ロジャースという人だった。二代目は、ドラマシリーズですぐ引退した問題のあるやつ。そして、ついに我らがファルコンがキャプアメ襲名。
マスクヒーローなんて誰がなってもいいので、どんどん新しい人が受け継いでいったらいいと思う。ヒーローの人間的な面にフォーカスし、その甲藤を描き続けてきたMCUの方針に真っ向から対立する意見だというのは重々承知だけれど、僕はヒーローのマスクの下の人物が誰かについては、まったく興味がない。
ピーター・パーカーよりも「スパイダーマン」が好きだし、本郷猛よりも「仮面ライダー」が好き。むしろ、内側なんかどうだっていいし、あいつらが何を思って戦ってるかなんて知ったこっちゃない。素顔のほうが好きな奴なんて、伊達直人くらいじゃないかな?
ヒーローっていう属性を背負ったのなら、人格を二の次にして役割をはたすべき。こういう危険思想を持っているため、マスクをつけていない「顔全出しヒーロー」の本名は、まったくこれっぽっちも覚えられない。
今回、はじめてスポットが当たったことで、ファルコンは本名サム・ウィルソンだと知った。ここまでアベンジャーズシリーズみてきといて、役の名前知らないとか、ホントいい加減なファンで申し訳ないですわ。
「ヒーローは役割に徹すべき」という極端な思想が、この映画で問われている問題とちょっとだけ重なっていたから、そこんところは面白くみれた。
個を犠牲に全体を優先する国家の政策が、どのような悲劇と憎しみを生むのか、お国を背負ったキャプアメだからできるアプローチでもって、アメリカの汚い部分を子供でもみれるレイティングの範囲内で、よく描いたと思う。
ファルコンが語る仕事の流儀は、なかなかカッコいい。長年戦ってきた男としての矜持。「俺がしくじったら、この立場になれなかった人達に申し訳がないから。」という言葉。超人血清とかない生身のおじさんが言うから、言葉の重さが違うぜ。
とは言いつつ、血清射っときゃよかったみたいな弱音を吐いたりする場面もあり、ファルコンというキャラクターのお茶目さをあらわしていて、そこは微笑ましかったです。
小ネタとしては、お調子者の若造がアントマンの話題を振ると、ちょっと拗ね気味のテンションになるのがかわいらしい。
真っ向勝負でボロ負けした挙げ句、施設への侵入を許し大切なモノを盗まれたことを、まだ根に持っていそう。結果的に仲間になったから良かったものの、悪党に奪われてたらクビが飛ぶ大失態だ。
「アベンジャーズ所属ファルコン。無職の泥棒とのタイマンに敗北!」字面にするとしょうもないネットニュースの見出しのようですね。
最後もよかった。あんなバチギレ赤鬼に、ちゃんと対話によるケアを試みようとしていて偉い。ここ最近のヒーローものの悪役の扱いについては、時代に合わせた模索と苦心を感じる。ブラックパンサー2とかは、半殺しにして言うこと聞かせたりしてたのがよくない。
ただ、黒幕ショボかったなぁ。とても頭がいいらしいけど、コイツはすごく頭いいんだぞっていう表現が、相手の行動を予測するとき「~の確率ナントカ%」みたいなセリフを言わせるっていうベタさ。どうなのよそれ?テニプリの乾とかも、子供ながらにちょっとどうかと思ってたもん。終盤はデータテニスなんか通用する世界じゃなかったもんね。
せっかく『インクレディブル・ハルク』の物語のあと、語られなかった血と犠牲が10年あまりもの歳月を経て回収されたのだから、はち切れんばかりの憎しみを内に秘めたヤツが出てきていいはずなのに、アイツにはリアルガチな憎悪を感じられなかった。もっと切実に酷い仕打ちを受けたかわいそうな人として描写すれば、名悪役になれただろうに。
不幸な犠牲者であるにもかかわらず、国への献身という美名のもと、人生を失ったのだという説得力が欲しかった。あんな特殊メイクなんかよりも、ただ老けてやつれているだけのほうが悲壮を演出できたんじゃなかろうか。
ロス大統領を演じたハリソン・フォードの頭皮のみえる白髪頭には、しっかりとした重みがあったので、黒幕のアイツにも同等のものを期待してしまいました。
あとは、現実とはかけ離れた外交に強気な日本が最高。アメ公がその気ならオレらが先に貰っちまうぜと艦隊を派遣し、さらに攻撃を確認したら秒で報復許可を与えるとか、さすがに覚悟完了すぎる。オザキ首相のサムライっぷりにネトウヨの血が滾る!
そんなわけで、文句なく傑作とまではいかないけれど、新キャプアメ体制始動を伝える堂々たる新作だったと思う。
今、アベンジャーズの新作を褒めてるのって、ドラマも全部みてる熱心なファンか、俺みたいな茶化し半分の変なやつしかいないんだろうけど、ある程度の満足度は保証されたフランチャイズだと再認識。
ガーディアンズで最後、デッドプールで今度こそ手切れとか言いつつ、やっぱダラダラと好きだなぁ。ここまで来たんだから、終わりまで見届けようと思う。サンダーボルツも、宇宙忍者ゴームズも、楽しみだで!ムッシュムラムラ!