「この町も、もう終わりだな」
「あなたは、タイに何があると思ってる?」
これはアレだな、スパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライト シング」の限界地方都市版だな、と、見てる途中で頭に浮かんだ。
日本人、日本の土地、ブラジル移民、タイ移民。
何にも起きない平々凡々な日常の中に渦巻く、ドス黒い腹の探り合いと、ヒリつく感情。
ブラジルから来た奴らは、ロクに働きもしないで!と地元民は言う。でも、彼らも生きるためにそうした訳で、老人ホームのおばあちゃんが言ってたように、古くは日本人だってブラジルに出稼ぎに行ったり移住して畑作ったりしてたわけで。移民達は生まれ育ちは日本だが、血はブラジル。生き方まで日本の文化には沿えられない。
タイは温暖な気候で穏やかな人々、遊んで暮らせるし良いよね!と日本人は言う。そんなの幻想。一年中蒸し暑いし、移民がありつける仕事なんて、タカが知れてる。働けど働けど、賃金は安い。そんなのじゃ家族は養えない。
平和な暮らしにアグラをかくな。よそ者が。帰れ。か。
事前調査で一本映画作るだけのことはある。リアルすぎて説得力ヤバい。
この作品に通して流れていたのは、「気持ち悪さ」
みんながみんな、行動や言動が気味悪い。しかもそれが現実にありそうで、もっと薄気味悪い。
タイパブの女の子に入れあげる精司も、上昇志向がイタイし30半ばで喋り方がキモすぎるその妻も、考え方が偏りすぎな猛とその弟も、ラップやってるくせに確固たる信念のないArmy villageの面々も、考え方と言動が適当すぎる保坂も、みんなみーんなイタくてキモかったけど、中でも私が最上級に嫌悪感を抱いて体がブルっと震えたのは、猛にしつこくしていた、まひる。こんな子、いるんだよ。。私の周りにもいた……完全に、彼女を煙たがる地元の友人達目線で眉間にシワが寄った…
都会での夢が破れたかは知らないけど、スピっちゃって周りを巻き込もうとしてる子…当然周りは潮が引くように離れていった。活動するだけなら良いけど、体使っちゃダメだって。
唐突なラスト、ドゥザライトシングもそうだったけど、この物語も、何も解決しない。彼らの日常は続いていく。彼ら自身が、終わらせるか、変えなければ、同じ日常がずーーっと続いてく。そして、少しずつ衰退していく。楽しさも希望もない。
ありえなくはない話だから悲しい。
「日本人は金の話ばかり!」と精司は言うけど、じゃああんたどうやって生活してくのよ。土方の仕事にも誇りはあるさ。でも、ずっとは続けられないだろ?
だったらまだ、お金が欲しい!とガツガツ働いていたいかも。
あれから10年。何も変わってないよ。
テクノロジーは進化したけど、仕事があるけどない状況、変わってないし、むしろひどくなってるよ、多分。この国、どうなっちゃうんだろうね。
前日譚を経て、サウダーヂでちょっぴりオジサンになったひーくんともっとワイルドになった田我流が出てきてちょっとホッコリした後、新作のプロローグ映像で(何についての話なのか、全くわからなかったけど笑)、もっとオジサンになったひーくんと、出所して?丸くなり悟りを開いたっぽい田我流が出てきて、わあ…ってなった。国道20号線の小澤って精司だったのか!前3作に比べると、撮られた自然が美しすぎて、それだけで眼福。
あとやはり急な音のボリュームupが心臓にキタ……しかも一番苦手なバイクのふかし音……耳を塞ぎたかった…絵はキレイだったけど。