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ある男のsomaddesignのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
5.0

宮崎県の田舎町で細々と文房具屋を営む里枝。離婚を機に故郷である実家に戻り、小学生の子供と母と暮らしていた。ある日出会った谷口大佑という男性と惹かれ合ううち、やがて再婚し子供にも恵まれ、幸せな家庭を築いていた。数年後、不慮の事故で大祐が亡くなり葬儀を終えた里枝は、納骨の相談のため長年疎遠になっているという大佑の兄を呼び寄せる。だが、遺影に写る大佑を見た兄は「これは大佑じゃないです」と語るのだった。

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原作未読。
「愚行録」の石川慶監督再び。

2022年の私的ベスト。
作りこそミステリーだけど、垣間見える人間の暗部の暗さ・現代的テーマの取り扱い方はルポルタージュのよう。サスペンスよりヒューマンドラマ。

コロナ禍の影響で撮影監督が石川監督の盟友ピオトル・ニエミイスキーから近藤龍人へバトンタッチ。これまでの硬質で冷え冷えとした質感は控えめで、シーンによっては温もりを感じるタッチが新鮮。
今どき珍しい1:1.66のヨーロピアンビスタサイズは横幅がとても狭く感じられ、登場人物たちの密接した絡まりだったり閉塞感、息苦しさが伝わってきて、観客もまた息詰まるかと思った。

追記)
冒頭とラストに映される印象的な絵画はルネ・マルグリットの「《複製禁止》」。マルグリットのパトロンであったエドワード・ジェームスのために描かれた。ジェームスの顔は描かれていないが、彼の肖像画と考えられている。
リチャード・アイオアディ監督の「嗤う分身」でも使われている。

78本目
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