えびしお

ある男のえびしおのネタバレレビュー・内容・結末

ある男(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

死んだ夫は実は別人だった。死んだ男の正体は誰なのか…という、大変面白そうなあらすじなのだが、真相が少し普通すぎたのは残念。謎の部分よりも、生き方の部分の方が主題だったように思う。深いテーマだし、決してつまらなくはなかった。

在日や殺人犯の家族といった、消すことのできない人生の烙印とどう向き合うか。在日3世だろうと殺人犯の息子だろうとそんなものはその人個人には関係ないもののはずなのに、世間はフィルターを通して人を見ている。
例えば弁護士がキレるシーンが何回かあって火病を起こしているように見えてしまうものの、冷静に考えると日本人でも何人でもカッとなる時はあると思い至るはず、というシーンなのかなと思った。つまり烙印のせいではなく個人個人の性格なのだと。ことの発端となった死刑囚の息子の原も、世間からいくら白い目で見られていても、優しいあの姿が本当の姿。
朝食のウィンナーをとり合うシーンだけは家族仲のよさや、原の人の良さが伝わってくるとてもよい場面だった。

弁護士は一見成功した人生を歩んでいるが、在日として差別され、妻は不倫しているという状況の中で、他者に成り代わりたいという願望が少しでも芽生えていたラストが印象的。
本物の谷口の方は他人と入れ替わるほどの人生には思えなかったけど、あのお兄さんを見ているとかなりイヤな目に遭ってきたんだろうことは想像がついた。だれかこの兄に「あなた失礼ですよ」って言って〜、ってずっと思っていました。