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ある男のjajaのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
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観ていていくつかの言葉が、浮かんできては消えて行った。最初に出てきたのは単刀直入に「なりすまし」という言葉である。多くの場合、そうすることによって詐欺行為を働き、不当な利益を得る。がしかし、この男はそれに当たらない。▼次に出てきたのは「アイデンティティ」という言葉だ。よく「自己同一性」などと訳されるが、あらためて辞書で調べると「自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること」とある。なるほど、この男の場合、名前は不連続ではある。しかし、だからと言ってなんだと言うのだ?▼で結局、行き着いたのは「信用」という言葉だ。およそ我々人間の営みは、信用に基づくものである。だが、その信用はどこから来るのか? どんな会社に勤めているとか、どんな学校を出ているとか、どんな所に住んでいるとか、そんな属性や情報は補足要素にはなり得ても、本質的には関係ない。氏素性、いや名前すら関係ないのだ。▼要するに、信用とは実際に接して、それを続けることで醸成するものだ。里枝親子はまさにそれをやったのだ。だから、男がどこの誰であろうと、確かなものが残った。城戸の家族はそれができていないようである。
jaja

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