Yuki

ある男のYukiのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.2
何と上質なヒューマンサスペンス。
自身の汚れたアイデンティティを否定したい。
でも存在そのものを受け入れてほしいと願う自分もいる。
どうしたら良いかが分からない。
その末に辿り着く一つの策が『他人の人生を生きること』
それにより自分自身を保っていく。

これは死去した旦那さんの正体だけでなく、
それを追っていくに見えてくる日本の根底渦巻く社会的差別にも切り込んでいる。
平等に見ていると思っても無意識に差別的視線を我々は送っているのかもしれないと気付かされる。

ラストの表現によりただのイイハナシだなーで終わらないのがまた面白い。
彼は現実から目を背けるために、
誰かの人生を複製し、それをなぞる事で
怒りや焦燥、孤独や悲しみといった負の感情を抑えているのだろう。

これは作品賞も納得の一本でした。
Yuki

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