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ある男のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.5
【差別描写がノイズとなって】
『市子』を観た時、『ある男』を鑑賞していなかったことを後悔した。Prime Videoに来ていたので遅ればせながら観てみた。面白かった一方で、妙に引っかかる作品であった。

とある田舎町に男がやってくる。安藤サクラ演じる女性が、ある悲しみを隠しきれずにいる。それに気がつくかどうかのサスペンスの中で停電が起きる。妙な間合いがそこで生じるが、特段関係は崩れない。その絶妙な間合いの中で二人は親密な関係となり、結婚するわけだが、ある日、彼が亡くなってしまう。彼の遺族が来るのだが、「こいつは違う人だ」と違和感のある間合いで言われ、ミステリーの幕が開く。

石川慶の丁寧なストーリーテリングによってミステリー映画としては竜頭蛇尾になることなく突き進んでいく。しかし、一方で妙に引っかかるところがある。日本人となった朝鮮人に対する差別が描かれるのだが、あまりにもストレートに描きすぎていて雑というかノイズに感じてしまうのである。丁寧な間合いに対して粗暴な差別といった構図なのだろうけれども、もう少し層があるような気がした。
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