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ある男のたむたむのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.7
第70回読売文学賞を受賞した平野啓一郎による同名小説をもとに、『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督が映画化したヒューマンミステリー。第46回・日本アカデミー最優秀作品賞を含む主要8部門受賞作。

不慮の事故で亡くなった夫・大祐が全くの別人であったと、妻・里枝から身元調査依頼を受けた弁護士の城戸が、謎の男Xの真実に迫っていく。

思いのほか深いテーマで、胸が締め付けられる…

本作は差別を背景とし、生まれ持った名前を捨て、他人に成り代わることで新しい人生を生きたいと願う、哀しい宿命を背負った男の物語です。
序盤こそサスペンスな展開ながら、根底は真実の愛とは何かを問うラブストーリーだと感じました。

Xの素性を追ううち、次第に自身を重ね合わせ、いつの間にか羨む気持ちさえ抱くようになった城戸。彼もまた凡ゆるしがらみから解放され、違った人生を歩みたいと願ったのかも。。

オープニングとラストで映し出されるのは、ルネ・マグリットの『不許複製』。この絵画をマグリットに依頼したとされる、大富豪エドワード・ジェームズなる人物の、内に秘めた疎外感を表現したものだそうです。まさに本作の主題と合致し、印象深いカットでした。

キャスト陣も素晴らしく、特に助演の窪田正孝は主演を喰うほどの強烈なインパクト。何気に、ドラマ『ふてほど』でキヨシを演じてた坂元愛登くんが、安藤さくら扮する里枝の息子役で出演しているのですが、デビュー作とは思えないほど堂々とした演技を披露しています。たった2年前の作品なのに、ドラマで観た時より随分と幼くて、成長の速さに恐怖しました(笑)
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