梅村

フタリノセカイの梅村のレビュー・感想・評価

フタリノセカイ(2021年製作の映画)
3.5
観終わるとタイトルの意味が良くわかります。二人の世界。フタリノセカイ。

昔本で読んだカイロウドウケツとドウケツエビという生物の話を思い出しました。(同音の『偕老同穴』という四字熟語が名前の由来です。)
雌雄未分化のドウケツエビの幼生は二匹で一対になって、花かごのような形をしたガラス質の骨格を持つ海綿の一種であるカイロウドウケツの中に入ります。やがて成長し網目の隙間より大きくなると、雄と雌に分化してそのまま死ぬまでカイロウドウケツの中で一生を二匹っきりで過ごします。

白状すれば、自分はこの映画のラストの展開に、美しさや多様な在り方への希望と同時に、少なからぬ怖さを感じてしまった部分は間違いなくあったと思っています。
共依存のメリーバッドエンド。閉じた世界での"二人"よがりな幸福。彼女達の選択をしてそう捉えてしまう視線こそが、性的な多数派たる我々の無意識な驕慢でありかつ無自覚な排他性であるのかもしれません。

性自認の問題にかかわらずですが、"ドウケツ"に押し込んで目隠しにしてきた人達の生身の人生をまず直視することから始めるべきなのだと思います。
梅村

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