ミミズ式SGキネマ倶楽部

さがすのミミズ式SGキネマ倶楽部のレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
4.5
ポンジュノ監督の助監督を務めていた片山慎三監督の最新作。「岬の兄妹」に続いて、またもややってくれました。

 失踪した父親を探す娘、、殺人犯を探す父親、殺す人間を探す殺人犯。そしてその三視点だけでなく場面ごとに幾重にも重なったこの「さがす」という行為がトントン拍子に予測不能なストーリーを組み立てています。

 引き合いに出すのは失礼かもしれませんが、福田雄一監督の常連になっており、そこでお笑い役として重宝されている佐藤二朗氏ですが、本作でそんな印象をガラリと変えてくれ、俳優であることを再認識させてくれる名演を見せてくれます。佐藤二朗だけでなく、娘役の伊東蒼、殺人犯役の清水尋也もどちらも怪演と呼ぶにふさわしい存在感を出してくれます。

 物語が三か月前、十三か月前と遡るに従って、明るみになっていく真相。そしてラスト卓球台で向いあいながら、子気味良くラリーを続ける親子がぽつりとつぶやく「待ち合わせにいたのお前か」の一言、それで全てが終わってしまうことが分かっているのに出てしまいます。そしてサイレンの鳴り響く中で物語が終了してしまいます。説明的になってしまいがちな昨今の映画の逆を行く豊かな表現を感じることができます。

 総じて佐藤二朗の真の姿を見ることができる上に、物語も目を背けたくなるような内容でありながら親子の絆を感じさせる良作です。ぜひご鑑賞下さい。