クリムゾンキング

からかい上手の高木さんのクリムゾンキングのネタバレレビュー・内容・結末

からかい上手の高木さん(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

原作(元、の方ではなく)で既に「幸せな未来」が確定しているので、ある意味安心して「高木さんと西片の関係性」を見守れるというのは大きい。

原作が時系列バラバラなのをアニメではうまくオリジナル要素加えつつ、時系列順に二人の関係性を描き、劇場版ではさらにその発展系、中学3年生の夏という「一生に一度、青春真っ只中」な時期にスポットを当てた作り。

大きなエピソードというより、主軸のものを中心に複数のエピソードが集まっている感じなので、連作を見ているような感じ、しかし、ともすればくどくなりがちなテーマの本作において、飽きずに集中できるのは確か。
むしろ映画化に向いていない構成の中よくここまで劇場用に構成できたなと思うばかり。

高木さんに関しても、(原作はもっと攻めているが)3期は結構攻めていたのに、当社比10倍くらいの攻め具合、しかしいやらしさを全く感じさせないあたり絶妙な塩梅。
「中学生の主人公」という、大人と子供の狭間、大人びていながら年頃の少年/少女らしい無垢感というか、健全さが胸に刺さる。
特に真野ちゃんから聞いた「蛍」に関する噂の時の表情や、仔猫ハナ関連のシーンでは初めて高木さんが「年頃の女の子らしい」感情を見せるので、非常にハッとさせられる。

周りの友人たちのやり取り、永遠に続くかと思える友情も、いつか終わるのでは?将来自分はどうしているか?という不安、ここあたりくるともう誰しもが通った「あの頃」のことが頭をよぎり、胸が締め付けられること請け合い。

しかし、そうであっても「決して悲しい気分にならない」のも本作の持ち味。

そして気になる二人の関係、正直この展開しかないな、という反面、これここでやっちゃったら原作どうやって終わらすの?という感じであるが、虫送り、仔猫の世話、友だちとの思い出、そしてポスト・クレジット共々伏線回収含めしっかりと纏められているので、青春映画、ジュブナイル映画としても真面目にに作ってあって良かったし、アニメを観ていればよりニヤキュンできるが、観てなくても話が繋がるという構成も最近の「前作ありき」の作品群からするとかなりの新設設計。やはり映画化とはこうでなくては。

それから劇中で語れる言い伝え(噂)について。
1期(OVA)のウォータースライダーや、2期のフォークダンス、3期の良い恋階段、そして今回の蛍のエピソードなど「一緒に行えばラブラブになれる(いつまでも一緒にいられる)」というジンクス、これら全て、高木さん&西片は一緒に行うことができていない。
恋に恋する年頃の少年少女が求めてしまう「愛情の永遠性」を否定してるようでいて、「西片となら、見つけられると思って」と言うように、ジンクスに頼らずに想いを遂げようと言う健気さ、そしてラスト、どんなに年月が経とうとも一緒にホタルを見つけ、約束を果たしたことで、そんなジンクスになんて頼らずとも想いの強さでどうとでも苦難なんて跳ね除けられる、なんて言う明るい未来へのメッセージと云った演出のような気がして胸がいっぱいになってしまう(実際明るく幸せな未来なのだが笑笑)。

個人的には、これで終わってほしくないという感じなので、そういう意味ではちょっと寂しい、しかし、アニメからの使用楽曲ともども、自分のドンピシャな感じなので、それら含めてやはり「最高」だなと思う作品だった。

原作の持つ「高木さん」っぽさはあるか?と言われれば、プロポーズまがいのことをしてしまってるので、くっつきそうでくっつかない(はよくっつけ!)というのが持ち味だったのとはちょっと趣が違い、そこは違うんじゃない?という感じも受けなくはないが、映画化するにあたってはやはりそれなりの「展開」「オチ」を用意しなければ意味がなく、アニメ一期から、牛歩でありながら確実に距離を詰めてきた二人の関係性の一つの到達点という意味でしっかりと「映画的なオチ」になっているので、ヒットに乗じた惰性の映画化、という感じは全く受けなかったししっかりと「映画化」の意味を達成していたと思う。

まあ、ファン目線がめちゃくちゃ入った感想なのと、個人的なものとしてノスタルジーや憧れや恋愛感情などとは別の意味で猛烈に感情を揺さぶられる要素があってその時点で自分がこの作品を特別視してるところがあるので、一般の人や初見の人からしたらどうか?という点に於いてこの文は全然当てにならないものなのだけど(できるだけフラットに書いているつもりではあるけれど、あくまで「つもり」)、願わくばこれに終わらず、これからも我々をからかい続けてほしい。