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からかい上手の高木さんの都部のレビュー・感想・評価

からかい上手の高木さん(2022年製作の映画)
3.1
原作は中学二年生の日々を繰り返しながらこの男女が交際までの精神的前戯を執り行う話なので、本作はそこから時間も関係性も前進させるという気概を感じるコンセプトなのは劇場化の意義を感じさせるもので悪くない。

とはいえ物語開始から暫くは二人にとっての普遍的な日常が描写されるので『本当にこれ映画にした意味あるか?』と疑念が湧くものの、本作のテーマである進学という契機に伴う『不可避の別離』にスポットが当たり出すことでようやく物語の構成が掴めてくる。

『中学生最後の夏休み』というエモーショナルな状況で、両名は子猫を拾い育てるがこの所謂 擬似的な子育てがラストに効いてくるのはなるほどなと思ったし、交際関係をすっ飛ばして夫婦の真似事のような距離感の遣り取りが強調されるのはアニメシリーズには出来なかったことをやっている。そして別離を経て、不安感を煽られた二人がああした形で結ばれるのは性急に感じるものの納得の出来る筋立ては用意されており、先行最終回然としたエピソードとしては大変よろしいように感じる。

さておき二人の関係性のある種の結実を描く上で、『子猫』という比喩的存在を立てるのは既に明示されている結実を上手く取り扱った算段であると言えるが、それが一概に褒められるものではないとは言えないのは避け難い事実である。そこまでやるなら、結実を曖昧模糊とせずにしっかりと描くべきだと思ったし、強く印象的な言葉を使って場面を切り替えることでそれらしい雰囲気だけを出しているのは、本作のテーマである別離に対する表明としては弱い。

また挿入される別生徒達のエピソードはこの二名の話に有機的に機能することはなく、それらしい青春感の為の義務的な消費の域を出ないため作品としては不必要な要素である。

これが漫画であるなら作中に登場する端役の顛末を書くのは自然だが、映画という媒体でそれ単体で完結している脇道は不細工でしかなく、ただでさえ映画としては尺の短い本編を少しでも映画たらしめようとした言い訳めいた所作のように感じさせるのはよくない。無駄に長い歌唱に被せて、始まりと終わりを繋ぐ間に位置するエピソードを背景で流していく下りなどにも同じことが言える。

かようにアニメから派生したオリジナル映画としては及第点だが、作品の外側に位置するシリーズを前提にした作りや映画としての尺の扱い方は目に余る部分が散見されるため、映画としての評価は良好とは言えない。
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