Erika

幻滅のErikaのネタバレレビュー・内容・結末

幻滅(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

バルザックの「人間喜劇」の一編、『幻滅——メディア戦記』を映画化した作品。

文学を愛する純粋な田舎の青年リュシアンが、虚栄にまみれたパリでの生活を通して、全てを失っていく…。

19世紀の王党派と自由派の汚職が溢れるジャーナリズム抗争に無自覚に身を投じてしまう姿が、終始切なかった。
思い描いていた理想が全て虚構であったことに気づくラストが圧巻。
まさにタイトルの『幻滅』だった。

リュシアンが幻想を抱いてしまった最大の要因は、出自へのコンプレックスと純粋さであろう。
周囲の評価で自分の価値を定めてしまうがゆえに、根なし草のようにその場しのぎで立ち回る。井の中の蛙のため、世間のあり方を知らず客観的な視点を持ち得ない。
その結果、物事や人物の本質を見極めることができず、悲劇へと向かっていったのではないか。

誰かが売って、誰かが買って、誰かが評価する…。
芸術作品と読者や観客の間に媒介者が入った時点で、その人あるいは組織の思惑が入り込む。
19世紀を舞台に一人の不運な青年の没落を描いているだけでなく、現代にも通じる「芸術の純粋性」が問われる良作だった。
Erika

Erika