「戦争に勝者はいません。敗者のみです」
楽しく美しいサーカスの場面から一転して空襲の阿鼻叫喚が恐ろしい。
エンタメ全開っぽいビジュアルだけど、初っ端から反戦メッセージがドカンドカンと落とされる。
メッツァ・ピオッタのメンバーはユダヤ人の団長イスラエルと4人のフリークス(フランツ曰くファンタスティック・フォー)。電撃少女マティルデ、アルビノの虫使いチェンチオ、怪力狼男フルヴィオ、磁石人間マリオ。フルヴィオがチューバッカ過ぎて笑える。
それぞれが家族にまつわる辛い過去があり、サーカスのメンバーを家族のように思っているが、イスラエルがお金を預かったまま戻ってこなかったために関係にヒビが…。
ベルリン・サーカスでピアノを演奏するフランツは、エキセントリックではあるけれど、作曲もできるし絵もめちゃめちゃ上手くて芸術の才能に溢れている。予知能力まであって、世が世ならスターになれるのに、時代が彼を認めないのが切なく、憎みきれない。
ヒトラーに心酔し、国のために役に立ちたいと思っている本来は忠誠心の強い真面目な男。今だったら指が1本多いだけでここまで差別を受けるなんて信じられない。
フランツが見た未来のスケッチが、歴史的な出来事だけじゃなくフィリップ・スタルクのシトラススクイーザーとかプレステのコントローラーとかハンドスピナーとかが混ざってるのが面白い。
iphoneから飛び出してきた映像にマイケル・ジャクソンの足があったのも見逃せない。
3人と別行動を取ったマティルデは戦争で身体を欠損した人達のレジスタンスグループに出会う。彼らも後天的なフリークス。
マティルデにはあるトラウマがあって自分の能力を人に向けて使うことを頑なに拒んでいるんだけど、最後の覚醒が最大の見どころ。
戦争とか超能力とか派手な演出やちょっとグロもあったけど、根底に流れるのは愛の物語だった。
そしてエンドロールではニヤリ