さー

パワー・オブ・ザ・ドッグのさーのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.0
何千年もの長きに渡り、女性を抑圧し、男性を縛ってきたすべての「男らしさ」を今作がまるごと葬ってくれました。映画における「男性性」に疑問を投げかける昨今の作品群の中では、いちばんしっくりきたし、わたしの中で一応の解決を見た感じすらある。自分でもびっくりよ、、

見始めたときは、ポスターどおりの陰気な(失礼)ムードに、さてあと何分起きていられるかな…と諦めモードだったけど、登場人物たちの個性がはっきりしてくるにつれ、ぐいぐい引き込まれた。

周囲をぐるりと囲む壮大な山々と、ベネ様沐浴の地の静謐さ、どちらの自然描写もすごく良い。多くを語らずとも、風景を見ているだけで登場人物の心情を掴めそうな気になる。

新入り妻をあの手この手でマウンティングするベネ様は、ほんと憎たらしいし、登場するたびに威圧感が画面を飛び越えて押し寄せるほどの迫力なんだけど、傍若無人に生きてるようで、心のどこかに大きな喪失を抱えているように見える。それはただ恩師を亡くしたというだけではなく、「男らしさ」を得ようとする中で失ったベネ様らしさなのかもしれない。そう思うと切ないね。
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