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パワー・オブ・ザ・ドッグのsIKのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.5
ピアノレッスンが刺さりすぎて辛いので期待感はあったけど、もう、頂点の映画すぎる。
生まれながらの英国紳士カンバーバッチにカウボーイを演じさせる配役がもうエグい。

以下は徒然なるままに書く感想とネタバレ。

ブロンコヘンリーを讃えるフィルはホモソーシャルの中で「男らしさ」の尺度で彼を愛しているふりをして、その実、ゲイとしての性愛を抱いていたのだろうと解釈。その上で必死に2人の関係や自分自身を守るためにマチズモにしがみつく。

私は弟のジョージが持つ妻ローズへの愛情は正直かなり薄っぺらいな、と思う。かりそめの優しさでピアノを弾かせ、家に閉じ込め、人形のように飾り立てる。
彼女のアルコール依存にも気づかない。

ローズの息子で医学生のピーターがフィルを殺めたのは、単にローズを抑圧する彼憎さゆえではないと思う。ピーターもまたいじめられ、男らしさのなさに苦しみながらも、自分の中に萌す同性愛者的な欲望と、男性社会の構成員としてのホモフォビアの葛藤ゆえに、フィルを殺したのだと思う。
ラストで彼は窓から母とその夫が寄り添い合うのを夜なのに眩しそうに眺めているのだ。

フィルとピーターは2人ともホモソーシャルでの外れもので、互いの陰なんだと思う。
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